| shimaさんのご質問にはいくつかの問題が含まれていますが、それらを以下の3点に集約してお答えいたします。 1)とても珍しいケースといわれたこと。 2)下顎前歯を削ること。 3)担当医の対応あるいは態度ー重大な決定をするにはもっと時間と慎重さが必要ではないか。 外科矯正の患者さんは、手術が直前に迫るとナーバスになるのは大体どなたも同じようですが、shimaさんの投稿文からにじみ出る不安感を読み取ると、医療人側は患者さんにもっと繊細な気遣いをもって接しなければと、反省させられます。shimaさんは、長い術前矯正の末にやっと7月の手術にまで漕ぎ着けたわけですが、初診時の診断や治療方針の説明の際に<(こういう点で)珍しいケース>ということはあっても、手術を目前にした段階で<珍しいケース>とはどういうことなのか、想像しにくいところです。 1)は、shimaさんのケースが極めて珍しいケースとか特異な事態が生じたというよりも、担当医が何気なく発した不用意な発言という気がしますが、実際はshimaさんの口の中や資料を見なければ何とも言えません。逆に、見ればかなりのことが分かりますので、不安であれば他院でのセカンドオピニオンを受けられてはいかがでしょうか。また、執刀する外科医はどのように見ているのでしょうか。これも大事な点ですから、手術直前でなく一度相談されることをお勧めします。 これは2)に関連することですが、shimaさんの術前矯正は下顎は非抜歯、もしかすると上顎も非抜歯ということはありますか。非抜歯が間違いということではないのですが、非抜歯のために上下とも前歯が必要以上に唇側に傾斜し、術後も上下顎前突様の咬合になって前歯部の望ましい咬合関係が得られないのでは、と資料ない状態で想像します。
2)の回答は上記の想像を踏まえて、少しでも下顎前歯を舌側に後退させるために、そのスペースを獲得する必要から歯冠幅経の縮小(要するに歯を小さく)することになったのでは、と推測します。そうだとすると、本質的にはこれは好ましいことではありませんが、ある程度はやむを得ないのかもしれません。 歯を削ることは、矯正歯科治療ではそれほど特別なことではありません。前歯部の望ましい咬合関係を得るには、犬歯〜犬歯の歯冠幅経の総和が上下で一定の比率内にあることが必要で、不正咬合者にはその比率がズレているケースがあり、その場合に歯を削って比率を合わせます。専門的にはこの歯を削る作業をreduce(reducing)、disking、trimmingなどという言い方をしますが、すべて同じ意味です。ただし、shimaさんの歯を削った理由がこれかどうかは、この投稿からだけでは分かりません。 3)についてはshimaさんの言うとおりで、担当医に弁解の余地はありません。ことに歯を削る・抜くという不可逆的な(元に戻せない)侵襲行為については、事前に十分なインフォームドコンセントがあって然るべきです。そのうえで、あえていささかの説明(弁解)を加えると、歯列模型は、手術後に予測どおりの咬合ができるように矯正が進んでいるかどうかを模型上で確認するだけで、細かい分析はしません。すでに何度か模型をとっているということですから、見るべきところは分かっていますので、そこを最終的に見れば通常は十分です。今回、歯を削るという判断が必要になったのは、術前矯正が最終段階になって、微調整の必要な部分が模型から分かったので行われた診療行為だと思います。 いずれにせよshimaさんは、<珍しい>ということの具体的意味と、はじめの話にはなかった<歯を削らなければいけなくなった理由>について、改めてキチンと説明を受けるべきだと思います。<本当にこのままこの病院で治療を続けていいのか>という不安を抱えていることを、担当医は分かっていないと思いますので、不安を払拭する意味でも、まずは次の診療日を待たずそのための時間をとってもらうことです。セカンドオピニオンや外科担当医への相談は、担当医との話の次第によって考えることでいいと思います。
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