| kisyaさんは<現在、上下矯正治療中>ということですが、<手術を併用した矯正>つまり<外科矯正>を希望したものの、下顎枝の形態から離断手術を諦め<オトガイ形成術を視野に入れた>治療方針のもとで現在矯正中、という理解でよろしいでしょうか。もう一点、kisyaさんの現在の矯正治療は保険診療ではない(自費診療である)でよろしいでしょうか。 そう理解したうえで、ご質問の以下4点についてお答えします。 1)オトガイ形成手術のみでは保険が適用できないのか。 2)顎変形症は手術をしないと保険が適用にならないのか。 3)顎変形症の診断はいつ知ることができるのか。 4)矯正医はなぜ答えないのか。 まず、このご質問はすべて小泉内閣時における「聖域なき構造改革」の一環として一連の医療法改正案が可決され、昨年4月1日から施行されたことに始まります。詳細は省きますが、医療法と薬事法の改正から保険診療に対する見直しが厳しく行なわれ、特に昨年末、<顎変形症に対する外科矯正の診療報酬上の取扱い>について厚生労働省が<若干の変更>を通達したことで、矯正歯科界は混乱のまっただ中というのが現状です。 その要点を簡単に述べますと、 ・顎変形症(外科矯正)の保険適用には顎機能検査が必要ですが、このたびの通達から、これまで良しとされていた検査機器のほとんどが承認から外されたため、指定された検査機器を新たに購入する必要がほとんどの先生に生じたこと(その価格は高級車なみ)。 ・自費(保険不適用)の矯正患者の外科手術を保険で行なうことは、混合診療(禁止事項)に当るとして、術前矯正を自費で行なっている患者の手術は、保険が適用できなくなったこと。 ・そのため、これまで顎変形症を保険診療していた矯正医は、高額な機器を購入して保険診療を続けるか、それとも顎変形症の診療をやめるか。すべて自費診療だった矯正医は機器を購入しこれから施設申請をして保険診療を行なうか、それとも顎変形症の診療をやめるか、手術が自費でもそのままやるか等々、各矯正医はそれぞれ自院の事情でどちらかの選択を早急に迫られています。
ご質問への回答です。 1)オトガイのみの形成手術は保険適用されません。以前は曖昧で、適用できたこともありましたが、今後は審査がますます厳しくなるはずです。 2)そもそも顎変形症という病名は保険のためと思ってください。健康保険は疾病保険ですから、何らかの病気がなければ保険が適用できない仕組みになっています。そのため、<手術を必要とする不正咬合の病名を顎変形症>と付けている、と考えてください。したがって、手術を伴わない(しない、できない)ものは通常の不正咬合として、保険の適用外とされ、もしそれまで保険診療していた場合は、医院側は受け取った報酬分をさかのぼって支払い基金に返還し、はじめから自費診療扱いに変更します。 3)上記のように、外科矯正を行なう不正咬合を(保険診療上)顎変形症と呼ぶのであって、学術的な病名とは異なります。 kisyaさんを含めて出っ歯にせよ受け口にせよ、骨格的には大抵の矯正患者は顎変形症ですが、治療方針として手術をするかしないかの違いです。 4)担当の矯正医は自院として顎変形症の扱いを今後どうするか、大いに迷っているところではないでしょうか。ある届出の期限は4月末までですが、事情は日々刻々と変化していますので、他の先生方と協議したり動向を見極めようとしている最中かと思います。今後、先生から何らかの通告(返答)がkisyaさんにあるかもしれません。
現在、顎変形症に係わる状況がかなり流動的であること、そして対応が各医院によって異なることから、回答も断定的なことはいえません。kisyaさんはご自分の医院の対応に注目していてください。
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