| あげはさんの矯正資料がなく詳細は不明のうえですが、基本的に、あげはさんの担当医とは矯正に関する理念、目標、方針が異なるように思いますので、回答はその点をご理解のうえ、単なる一矯正医の個人的見解としてお読みください。 まず、親知らずは人類の(遠い)将来には消失する歯で、すでに日本人の4人に一人は親知らずを生まれつき持っていない、という報告があります。将来消失する徴候はすでにあって、退化傾向として歯冠には定型がなく矮小形や萎縮型の形態を示し、裂溝(咬合面にある溝)は不定形であたかも皴が寄り集まった状態のものが少なくありません。 歯質は本来の歯より脆い(う食抵抗性が低い)とされ、形態やその位置からも虫歯になりやすい歯といわれています。歯根も大臼歯らしからざる形態で、単根で短いものもしばしばです。結論として、親知らずは原則として不要な歯という認識です。 あげはさんの下両側6番の銀歯が、どの程度のダメージを持つ歯かが非常に大きな鍵ですが、一般的に、6番7番の本来持つ形態的・機能的特性は、それを7番8番で代用しても同じというものではありません。また、もし仮に下両側6番の銀歯が要抜歯と診断されるほどの疾患歯だったとすれば、親知らずを抜歯した一般歯科医も抜歯はしなかったと思いますし、<歯茎の中に完全に埋まって斜めになった状態の親知らず>を使うことになったとしたら、それを露出させ装置をつけて7番の位置に並べるには、通常の動的期間より大幅な期間延長を覚悟しなければいけません。 また、上下の歯数を同じにして咬合させる場合(つまり通常の場合)、片顎(上顎だけか下顎だけ)に対咬歯のない親知らずを残存させることは、咬合上好ましいことではないので、それが正常に萌出した健全な親知らずであっても、それは抜歯の対象です。 以上、ザッと述べたような理由から、あげはさんの親知らず抜歯は後悔するほどのことではなく、抜歯は<あっていい処置>だったように思います。 なお、親知らずを抜歯しなければ、<健康な歯まで削ってスペースを確保する必要がなかった>ということにはなりません。この方法はあくまでも<非抜歯>という治療方針が前提にあるためにとられる処置で、この点が冒頭に申し上げた<理念、目標、方針が異なる>の一言に触れる所です。
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