| 矯正治療に直接関係したご相談ではなく、また、その方面に特別詳しいわけでもないこともあって、本来は回答できる立場にはありませんが、重い内容ということもあることから、思うところを述べてアドバイスとします。 セクハラは、本人が意図するしないにかかわらず、その相手(nanaさん)によって性的な言動であると受け止められ、それによって相手(nanaさん)に不快感、屈辱感あるいは不利益をもたら行為(言動)と定義されています。nanaさんが遭われたのはセクシャルハラスメント(セクハラ)そのものと考えていいでしょう。何よりも、セクハラはその程度に関わらず人権に対する重大な侵害です。 ことに、医師に対して<弱い立場>にある患者は、<権力を持つ加害者>からセクシャルハラスメントを受けても、加害者の意にそぐわない態度をとった場合の報復を恐れて、はっきりと拒否できない状況も予想されます。教員と学生の力関係のように、その立場を利用したセクシャルハラスメントはきわめて悪質といわざるを得ません。 以前、この質問コーナーでセカンドオピニオンの相談を受け、実際にその方が当院に来院されて話を伺っている中で、矯正治療上の問題と別にセクハラに遭っていることがわかり、関係機関を紹介したことがありました。後日、その方から報告があり、患者に対する医師のセクハラは非常に重い人権侵害で、医師が否定しても患者側の訴えがあれば受理されるということでした。 医師側には厳しい扱いですが、それだけに、医療人は患者さんに対して誤解を招き兼ねない言動に、人一倍注意する必要があります。最近は、プライバシーの保護から診療室内を完全個室化する医院もありますが、その一方で、密室化した診療室はセクハラ疑惑を生みやすいという心配もあります。当院は昨年の診療室改築に当たって、完全個室ではなくセミセパレート型式とし、男性ドクターと女性患者が二人だけにならないよう、できるだけアシスタント(女性)が側につくよう配慮するようにしています。また、完全個室である相談室では、必ず断ってドアを少し開けままでお話しするようにしています。余談が長くなりましたが、友人の歯科医の多くも、このような配慮をしてセクハラ疑惑に巻き込まれないよう注意しているというのが、最近の歯科医院内の現状です。 それに比べるとnanaさんの主治医は不注意であり、それ以上にセクハラの常習者の可能性も考えられますが、セクハラ常習者には自己反省をあまりしない人に多く、罪の意識が低い人が多い、とその筋の報告書にあります。
では、現実にnanaさんはどうしたらいいか。まず、一般論として、あるところにあった対策を書き写してみます。(*以下は筆者のコメントです) 1) 加害者に「NO」の意志をはっきり伝えましょう。 加害者(先生)からの報復を恐れて拒否できないと、加害者は許容されたものと誤解してセクハラを繰り返すことも予想されます。「不快だ」という気持ちをはっきり伝えてください。 * これができれば問題ないのですが、これがむずかしい。 2) 一人で悩まないでください。 自分にも何か問題があったなどと、悩む必要はありません。セクシャルハラスメントは、被害を受けた方の責任で起こるものではありません。自分一人では解決できないこともあります。いやなことをされたら、すぐに周囲の人に伝えましょう。 * nanaさんの場合、周囲の人とは誰になるのか。 3) 必ず記録をとっておきましょう。 あなたがハラスメントを受けた日時、場所、状況を必ず記録しておきましょう。それがあなたを救うことになります。 * これは必要なことです。このとき、周りに女性のスタッフがいるかどうか確認しておきましょう。 4) 悩まないで苦情相談窓口を訪れましょう。 セクシャルハラスメントなどの人権侵害を受けたら、一人で悩まないで苦情相談窓口を訪れましょう。 * これはある意味最後の手段で、司法に委ねることになる分、その後の影響も苦労も覚悟が必要ですが、執拗な人権侵害が止まらなかったら踏み切るべきです。
適切なアドバイスができないまま冗長な文章になってしまいましたが、最後に、医師側から考えて効果的と思える<セクハラをやめさせる方法>は、日時や内容から人物(nanaさん)が特定できない書き方で、抗議文を郵送することでしょうか。そのためには、匿名はもちろん郵送にはセクハラのあった日から少し日を置くこと、封書の住所はかくなる事情から架空のもの(あるいはその種の機関名と住所)にしてあることを弁解を含めて、伝えておくこと。 第一段としてはこの程度でいかがでしょうか。正直、この種の手紙を貰うと医院側は<ビビる>はずです。それでもセクハラが止まらないようであれば、一緒に次の手を考えましょう。何よりもnanaさんの矯正生活が、最後まで快適に過ごせるよう祈っています。加えて、セクハラを疑われることのないよう、日々診療室での言動には慎重であらねば、と肝に銘じています。
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