| 今回のまるさんのご相談は、状況こそ違うものの「要再治療」という意味で、過去ログにも散見できる少なからぬ事例といえます。まるさんの<納得できない>という、憤懣やる方のない気持ちは文面からよく伝わってきますが、元凶は、責任ある組織が日本の矯正歯科界を整備しようとしてこなかったところにあります。矯正学的にいかにもいかがわしい(自称)矯正医や矯正装置、矯正法による被害は後を絶たず、まともな矯正医のほとんどが、やむなくその後始末を引き受けているのが日本の矯正歯科界の現状です。 まるさんの最初のボタンの掛け違いは、<月一回契約矯正医の診療がある歯科にて歯列矯正を開始>したところにありそうです。この診療形態やそうする矯正医をすべて否定するものではありませんが、転居の可能性(通院が不可になる可能性)のある患者さんにとっては好ましくありません。大抵は大学からの比較的若い医局員のアルバイトですから、全国的な矯正医の紹介網をもっていません。その土地に根を下ろした矯正専門開業医院で治療するのが無難なのは、こういう点にも表れます。 次いで、一応紹介した一般歯科医が<経過観察なら僕にもできる>と、矯正治療を甘く見て(あるいは矯正をよく知らないまま)引き継いでしまったことが、状況を悪くしました。<紹介状にて引継いだ歯科医の治療責任、説明義務等は問われないのか>ということですが、ここが矯正歯科界の整備されていないところで、歯科医師であれば法律的にも学会としても「診てはいけない」ということはできず、今の状況に至ったことを医療ミスとすることもまずできません。そこは、医療人としての倫理、道徳に委ねるしかない、というのが矯正歯科界の実情です。それでももしこの責任を問うとしたら、クレームとして地元歯科医師会の苦情処理窓口に相談されることでしょうか。 まるさんが今後どうするかはむずかしいところですが、今は信頼できる矯正歯科専門医院で、改めて相談されることが望ましいように思います。
|