| <歯槽骨の吸収がひどく>という症状は歯周病を意味しますが、書かれた文面から推測すると、大抵の矯正医は、はなさんを診たら同じような話をするに違いありません。はなさんの歯周病の状態がどの程度かは分かりませんが、今の歯ならび、咬み合わせが歯周病の誘因であり増悪の原因である可能性は十分考えられますので、できれば矯正治療をした方がいい、ということはいえます。 当院でもはなさんのようなケースは少なからず経験しておりますが、このような場合の手順として、まず歯周病科の専門医(当院の場合は歯科大学病院の歯周病科)に紹介し、依頼書に病状の報告と治療、指導管理および歯牙移動(つまり矯正治療)の是非について助言を求めるのを通例としています。そのうえで、歯周病の一連の治療が済み矯正治療にゴーサインが出たら、矯正に入るようにしていますが、いままで歯周病科から矯正治療をしないよう助言されたケースは、いま思いつく限りなかったように思います。 現に、われながら心配するほどの歯周病を有していた50代の女性を、歯周病科での治療の後、当該科に定期的に通院しながら抜歯ケースとして矯正治療を終え、今は健康に推移している患者さんがいますし、もっと若い年代の患者さんでは何人かすぐにも頭に浮かびます。 現在当院では、矯正治療の充実のために予防歯科を積極的に取り入れ、一般歯科の先生がそれに当たるシステムになっておりますので、歯周病の患者さんは矯正治療の間も必要に応じて歯周病の管理、指導、治療を行っています。そのため、歯周病を有する患者さんの矯正治療に対する不安は以前よりズッと少なくなりました。 はなさんは、まず歯周病科の専門医を紹介してもらい、治療と指導管理のうえで矯正治療の是非(リスクと可能性)について助言を求めてはいかがでしょうか。専門医の指示を守り、正しい刷掃習慣を身に付け、必要な器具(たとえば超音波歯ブラシやウオーターピックなど)やそれ用の歯磨剤を使用することで、歯周病の進行は食い止められるものです。「矯正治療がその動機付けになった」というのは、治療を終えた患者さんがしばしば口にする言葉です。 最後に、骨吸収のある歯周病患者さんの矯正治療では、治療後にブラック・トライアングルが出現することはをある程度覚悟しておかなければいけません。この説明は<ブラック・トライアングル>をキーワードにして調べてみてください。
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