| はじめまして。 junkoさんのご質問は、歯並びや咬み合わせと発音(発声)の関係ではなく、矯正治療にともなう装置や抜歯と発音の関係についてですが、まず基本的に、矯正装置や抜歯により発音(発声)に変化あるいは悪影響が出ることはないとお考え下さい。 歯の表面に着ける矯正装置(ブラケット)は、目立ちにくいという審美的な面ばかりでなく形や大きさの改良も進み、周囲組織への為害性などはまずありません。ただ、歯並びがあまりにデコボコで、たとえば八重歯が唇を盛り上げるような状態などの場合は、装置を装着した当初、唇の裏側にブラケットが当たって違和感があったり、あるいは擦過による傷ができたりすることはある程度やむを得ません。 それがどの程度の期間続くかは、その歯並びの不正の状態によりますが、それに対して矯正医は出来るかぎりの対処をしますので、装置装着によるしゃべりにくさについては、あまり心配される必要はないと思います。ただし、裏側(舌側)装置の場合はまったくこの限りではなく、目立たないということ以外はすべて欠点とも言える装置ですから、審美性以外は犠牲にする覚悟でなければ装着すべきではなく、ことにjunkoさんのようなケースには禁忌です。 抜歯による発音(発声)への影響ですが、発音(構音)の仕組みから、前歯の抜歯は他の人が聞いて分かるくらいの影響、あるいは音が漏れて発音しにくいと本人が感ずるような影響が出ますが、通常の矯正上の抜歯は、機能的にも発音上もほとんど影響のない部位を抜きますので、たとえ抜歯をしてもその影響を心配することはありません。 抜歯が発音(発声)に影響しそうだからといって、本来抜歯しなければ治せない不正咬合を非抜歯(歯を抜かずに歯列を拡大して治すやり方)の矯正治療は、安易に受け入れるべきではありません。また、人工の歯(義歯)は思っている以上に違和感があるものですから、歯並びを審美歯科(義歯による見栄えのための歯科治療)によって治すと、後悔する危険があることも知っておいてください。 矯正治療時の痛みについてですが、これは極めて個人差があり、その人の感受性(痛みの閾値)、年齢、不正の程度、治し方などによって様々です。ただ、その痛みは虫歯や傷などのそれと異なり、歯が浮くような締めつけられるような感覚で、痛くてしゃべれないというのではなく、硬いものを咬もうとすると咬めないという類いの感覚と理解して下さい。それも、装置装着の数日から1週間ぐらいで徐々に薄らいでいくもので、治療期間を通じて常にその痛みがある、というものではりません。 一般論としていえば、矯正治療を始めてもこれまでの日常生活、サークル活動、食生活など何ものもいままでと変える必要はない、といえるでしょう。
バンドサークルでボーカルをされているというjunkoに、矯正治療が妨げになることはほとんどないと思います。かって、音大声楽科に通う女子学生に対して抜歯による矯正治療をしたことがあります。開始に際して教授に矯正治療をしても良いかどうか聞いてもらったところ、是非やりなさいということで治療に踏み切りましたが、声楽にまったく支障なく無事矯正治療を終えました。すでにすべての管理を終えた患者さんですが、彼女は現在プロの声楽家として活躍されています。その他にもバンドでヴォーカルをされながら矯正治療をされた患者さんなどが何人かおられますので、それらの方に直接経験談を聞かれるのが良いかと思いますが、ネット上で探せばそのような投稿サイトはいくつか見つかると思います。検索してみて下さい。 junkoさんが将来プロのヴォーカリストとして立たれるのかどうかは分かりませんが、<とても歯並びが悪い>というのは、人前に立つ仕事をする人としては好ましいことではありません。矯正治療に踏み込むかどうかはともかく、まずは一度“矯正歯科専門医”に相談されることをお勧めします。
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