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ドキュメンタリー矯正治療 / ステップ18

アンテリアリトラクションとは?

今回のドキュメンタリー矯正治療では、アンテリアリトラクションについて説明します。

アンテリアリトラクションとは、アンテリアティース(前歯)をリトラクション(舌側移動、後方移動)することを意味します。
アンテリアリトラクションにより、前歯を後退させながら歯列にできた「すき間」を閉鎖し、歯列の一体化(隣り合う歯と歯が接触し放物線状に並ぶ状態)を獲得することができます。

アンテリアリトラクションとは

すなわち、キャナインリトラクションによってできた前歯と犬歯のすき間を閉鎖するのです。

アンテリアリトラクションをおこなう際に、通常の症例では犬歯より後方の歯を支点とし、前歯を移動します。

この時に、前歯のアンカレッジは犬歯より後方歯のアンカレッジに比べ弱いため前歯は後退します。

具体的な例で御説明しましょう。

今回のドキュメンタリー矯正治療の症例は、抜歯をして矯正治療する症例ではありません。ドキュメンタリー矯正治療の症例でもアンテリアリトラクションおこなっていますが、一般の方には分かりにくいため、抜歯して矯正治療をおこなった代表的な例を想定し下記の図で説明します。前歯(アンテリアティース)をピンク色に示しています。

図1 上顎の歯列を噛む面から見たアンテリアリトラクションの治療前後です

前歯をピンクで示しています

アンテリアリトラクション開始前
アンテリアリトラクション開始前
アンテリアリトラクション終了時
アンテリアリトラクション終了時
歯列のすき間が閉鎖された

図2 上下顎の歯列を横から見たアンテリアリトラクションの治療前後です

前歯をピンクで示しています

アンテリアリトラクション開始前
アンテリアリトラクション開始前
アンテリアリトラクション終了時
アンテリアリトラクション終了時
歯列のすき間が閉鎖された

アンテリアリトラクションの動きはお分かり頂けましたか?

アンテリアリトラクションに用いるワイヤー

では、実際の治療ではアンテリアリトラクションをどの様なワイヤーを使っておこなうのでしょうか?

ここからは、アンテリアリトラクションに用いるワイヤーについて御説明します。

スタンダードエッジワイズテクニックでは、患者さんのアゴの形態や歯の形態、治療のステージに合わせて様々なワイヤーを曲げて口腔内に装着します。
レベリングからキャナインリトラクションまでのステージでは、「ラウンドワイヤー」と呼ばれる、断面が円形のワイヤーを使用していました。
しかし、アンテリアリトラクションのステージからは、「レクトアンギュラーワイヤー(角ワイヤー、レクトワイヤーとも呼ばれます)」と呼ばれる断面が四角形のワイヤーを使用します。
キャナインリトラクションまでのステージでは、歯根までコントロールする必要はあまりありませんでした(注意:症例によっては必要になる場合もあります!)。

では、なぜアンテリアリトラクションでは、断面の形態が異なる種類のワイヤーを使わなければならないのでしょうか?

アンテリアリトラクションでは前歯をまとめて移動するために大きな力がかかります。そのため、上下歯列のバランスを大きく変化させることから、より精度の高い歯の移動が必要になるのです。したがって歯根のコントロールも必要となります。
歯根コントロールは、断面が四角形のワイヤー(レクトアンギュラーワイヤー)でなければコントロールできません。

では、なぜレクトアンギュラーワイヤーであれば歯根のコントロールが可能となるのでしょうか?

ワイヤーの力を歯に加えるブラケットには、ワイヤーを通すためのスロットと呼ばれる溝(みぞ)があります。
スタンダードエッジワイズテクニックにおけるこの溝の形態は、0.018インチ(約0.54ミリ)×0.025インチ(約0.75ミリ)の四角形の溝になっています。
この四角型の溝に、断面が四角形のレクトアンギュラーワイヤーをセットすることでお口の中に見えている歯の部分(歯冠:しかん)だけでなく、顎の骨の中にある歯の根(歯根:しこん)にまで矯正力を加えコントロールすることが可能となります。この様な、レクトアンギュラーワイヤーを用いた歯根のコントロールを、トルクコントロールと呼びます。

トルクコントロールは、少し分かりにくいので次回のドキュメンタリー矯正治療で、詳しく御説明します。

図3 ブラケット

 スロット

スロット
ワイヤーを通すための四角形の溝

図4 ラウンドワイヤーをブラケットに装着した状態

 ラウンドワイヤー


ラウンドワイヤー
断面が円形のワイヤー

図5 レクトアンギュラーワイヤーをブラケットに装着した状態

 レクトアンギュラーワイヤー

レクトアンギュラーワイヤー
断面が四角形のワイヤー

前歯を横からみた所 前歯を正面がらみた所

このような歯根の動き(トルクコントロール)は四角形のワイヤーでなければできない

四角形のスロットに四角形のワイヤーをセットすることで歯根のコントロールを可能にする

このような動きは断面が円形のワイヤーでも四角形のワイヤーでもできる

アンテリアリトラクションに用いるループ

スタンダードエッジワイズテクニックでは、歯を正確に動かすために様々なループをワイヤーに曲げこみます。

アンテリアリトラクションでは、V-loop(ブイループ)というループをレクトアンギュラーワイヤーに曲げこみ、このループを利用して前歯を後退させ、歯列のすき間を閉鎖していきます。

V-loopは、下記のように曲げ患者さんの口腔内に装着した時に基底部が離れるようにタイイングします。そして、次回の来院までにループが自然に閉鎖することにより前歯の位置が変化します。

図6  V-loopの拡大図

V-loopの拡大図V-loopの拡大図

V-loop装着、アンテリアリトラクション開始時

   V-loopが組み込まれたレクトアンギュラーワイヤー


V-loopが組み込まれたレクトアンギュラーワイヤー

V-loop装着、アンテリアリトラクション終了時

   V-loopが閉じることで前歯が後退し、すき間が閉じる


V-loopが閉じることで前歯が後退し、すき間が閉じる


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永久歯の矯正治療(Ⅱ期)の目安

治療内容
オーダーメイドのワイヤー矯正装置で治療を実施します。(スタンダードエッジワイズ法)
治療に用る主な装置
マルチブラケット装置、症状により歯科矯正用アンカースクリューを用いる場合もあります。
費用(自費診療)
約1,280,400円~1,472,900円(税込)
※検査料、月1回の管理料等を含む総額
通院回数/治療期間
毎月1回/24か月~30か月+保定
副作用・リスク
矯正装置を初めて装着後は、歯を動かす力によって痛みや違和感が出たり、噛み合わせが不安定になることで顎の痛みを感じる場合があります。
歯を動かす際に歯の根が吸収して短くなる、歯ぐきが下がる場合があります。
治療中は歯みがきが難しい部分があるため、お口の中の清掃性が悪くなってむし歯・歯周病のリスクが高くなる場合があります。
歯を動かし終わった後に保定装置(リテーナー)の使用が不十分であった場合、矯正歯科治療前と同じ状態に戻ってしまうことがあります。 ・
長期に安定した歯並び・噛み合わせを創り出すために、やむを得ず健康な歯を抜く場合があります。