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インタビュー44/Iさん「上突咬合 叢生歯列弓 下後退顎」

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「上下の奥歯がしっかり噛み合い 口が自然に閉じられるようになりました」

●矯正治療を受けようと思ったきっかけを教えてください。

小学生くらいの時から上の前歯が出ていて口が閉じにくく、下の前歯もガタガタしていて歯並びが悪い状態でした。学校の歯科検診で矯正治療をすすめられたこともあったのですが、見た目の面でワイヤーをつけることに抵抗があり、気になりながらもずっとそのままにしていたのです。両親から何度か矯正治療をすすめられたときも、そのたびに「まだいいよ」と答えていました。でも、20代後半くらいになって、頭痛や肩こりなど慢性的に不調が出始めたのに加え、顎がガクガクして痛くなるなどの症状も気になり始めました。その都度、内科や整形外科で診てもらっていたのですが、これらの症状は、歯並びや噛み合わせが原因のひとつなのだろうな…という思いもあり、これまでのばしのばしにしてきた矯正治療としっかり向き合おうと決心しました。

●OPひるま歯科 矯正歯科はどのように探したのですか。

インターネットで自宅近くの矯正歯科を探し、OPひるま歯科 矯正歯科を含め、3軒の矯正歯科でカウンセリングを受けました。1軒目の矯正歯科では、治療を受けた際のメリットばかりの説明でした。そちらの先生は「大丈夫ですよ」というようなことしか仰らなかったので、逆に「本当に大丈夫なの?」と疑問を感じてしまいました。もう1軒の矯正歯科は、先生がこわくて…(笑)。矯正治療は治療期間が長いので、通院することがストレスになるのは避けたいと思いました。

OPひるま歯科 矯正歯科は、院長先生の説明がとてもていねいでわかりやすく、矯正治療のメリットとデメリットについてしっかり教えてくれました。私の場合、治療スタートが年齢的に遅いので、歯と歯の間に「ブラックトライアングル」という黒い隙間ができやすいなどのリスクもきちんと説明してくださいました。メリットとデメリットを聞いたことで、矯正治療についても理解できたし信頼できると思いました。オーダーメイドでひとりひとりに合わせて治療してくださるところもいいなと思い、OPひるま歯科 矯正歯科で治療することに決めました。

● 抜歯について、どのような説明がありましたか。

顎の骨が小さくて、すべての歯がきれいに並びきらなかったのがガタガタになっていた原因だったので、抜歯をすすめられました。抜歯については、上は左右4番ということでしたが、右下6番の歯が中学生の時に神経を抜いてしまっていたので、その歯を抜くか、6番の歯はそのままにして5番の歯を抜くかというふたつの方針を提示されました。治療結果予測の模型を2パターン見せていただいたのですが、6番の歯を抜いてしまうと上の6番の歯と下の5番の歯を噛み合わせなければならず、サイズの違いがあって見た目も上下の歯がずれているような感じでした。

また、6番を抜くことで歯の移動距離も長くなり、5番を抜くよりも約1年、動的治療期間が長くなるということ、噛み合わせも安定させづらいことなどの説明を受けました。アンカースクリューを使うということも言われていたのですが、6番を抜く場合はさらにもうひとつアンカースクリューが必要というお話もありました。

晝間先生から、神経を抜いた歯はいつかだめになることも考えられるけれど、しっかりメンテナンスしてできるだけ長持ちさせるようにしましょうと、6番を残す方をすすめられ、私自身もいろいろ考えた結果、6番を残して5番を抜歯する方針を選びました。

●ワイヤーはいかがでしたか。

ワイヤーを装着する前に、上下の奥歯の歯間をあけるために小さいゴムをはさむのですが、2〜3週間ずっとつけっぱなしで、これは痛みがジワジワくる感じでつらかったですね。ワイヤーはつけてから3、4日間は痛くて、豆腐やスープ、プリンなどやわらかいものを食べるようにしていましたが、今思い返してみると、ワイヤーの痛みよりもこのときの痛みのほうが印象に残っています。

ワイヤーのしめつけが痛い3、4日間は、つらいと思うこともありましたが、自分からやろうと決めて始めた治療なので、「痛い」=「歯が動いている証拠」と、ポジティブに受け止めるようにしていました。矯正治療って、こんなふうに痛みを感じるんだと、自分の口の状態を客観的にとらえたりして、面白いなと思う面もありました(笑)。

ワイヤーをつけたときの見た目がずっと気になっていたのですが、実際につけてみると、周りの人はあまり気づかず……(笑)。小学生の甥っ子からはさすがに何か言われるかなと思っていたのですが、気づかなかったようです(笑)。最近は、矯正治療をしている芸能人の話も聞くし、以前に比べて矯正治療が一般的になってきたこともあるのでしょうね。周りからの視線が気になることもなく、良い時期に始められて良かったと思います。

●どのような時に治療の効果を感じましたか。

ガタガタだった下の歯が、ねじれがとれてきれいにそろっているのがわかったとき、すごい!と思いました。また、抜歯したところはしばらく歯と歯の間があいていたのですが、気がついたら隙間がきれいに埋まっていて、不思議な感じでしたね。治療経過が良く、ワイヤーのみで上の前歯が順調に下がってきたため、結果的にアンカースクリューを使わずにすみました。アンカースクリューは、ネジのようなものを歯肉に埋めると聞いていて少し不安でした。でも前歯を下げるために必要なら…と、ある程度覚悟はしていたのですが、使わないことになって正直なところほっとしました。

●治療が終わり、お口の状態はいかがですか。

口が自然に閉じられるようになって、口元の印象がすごく変わったと思います。ずっとコンプレックスを感じていたのですが、思い切り笑えるようになって良かったです。横顔の印象も変わって嬉しいですね。主人からも「きれいになって良かったね」と言ってもらえました。

治療を始める前は噛み合わせが悪く、いつもきちんと噛めていない感じがしていたのですが、治療後は、上下の奥歯がしっかり噛み合っていることが感じられるようになりました。おせんべいなど固いものが食べづらかったのが、パリパリ食べられるようになりました。噛み合わせが良くなってはじめて、以前はいかに噛めていなかったかが改めてわかりました。以前と比べて消化も良くなっているのだろうなと思います。体調の面でも、慢性的な肩こりは今もありますが、頭痛や顎の痛みはほとんどなくなり、かなり改善されました。以前は寝ている時、奥歯で歯ぎしりするクセがあったのですが、それも減ったようです。

●OPひるま歯科 矯正歯科で治療をしてよかったですか。

矯正治療だけでなく、メンテナンスにも力を入れているのでとてもよかったと思います。矯正治療を始める前に唾液検査をするのですが、私は唾液の量が少なくてむし歯になりやすいことがわかりました。また、歯みがきの仕方も悪く、歯のみがき残しも多いことも指摘されました。その後は治療のたびに衛生士さんから磨き方をていねいに教えてもらい、家でも実践するようになりました。治療がすすむに従って衛生士さんから歯みがきをほめられることも多くなり、治療を終える頃には唾液の量も増えて、みがき残しも減り、むし歯や出血のリスクが改善されていたのです。治療中、徐々に改善していくのが楽しかったので、家でのお手入れも頑張ることができました。歯並びが悪いとみがき残しも多く、その結果、むし歯や出血のリスクが高まることがよくわかりました。リテーナーで保定中の今は、歯ブラシでブラッシングしたあと、タフトブラシを使ってケアしています。先日は、フロスの使い方や、歯ブラシの当て方について教えていただきました。衛生士さんの話を聞くたびに、知識がすごくてつくづく歯のプロだなあと感心します。毎回いろいろなことを教えてもらえるので、とても勉強になります。

私の場合、成人してから治療を始めたのですが、お口の状態が今よりもよい若いうちに始めていたらもっとリスクは少なかったのかなと思います。とはいえ、3軒の矯正歯科でそれぞれの先生のお話も聞いたうえで自分自身が納得して始めることができたのでこれでよかったんだなと思っています。

大臼歯の失活歯を伴う成人の叢生・上顎前突症例
診断名:上突咬合 叢生歯列弓 下後退顎

今回は、幼少期より歯並びの異常を歯科検診で指摘されていたたものの矯正装置の見た目が気になり治療を行わず、成人になって矯正治療を開始したFさんの症例について解説します。下顎右側第一大臼歯は失活歯(むし歯により神経をとった歯)となっており、矯正歯科診断時に失活歯を抜歯する方針と抜歯しない方針の2方針を提案し後者を選択しました。その治療経過を解説します。

■初診時

 

現症および主訴

Iさんは幼少の頃から前歯が突出していましたが、20代後半になってから顎がガクガクして痛くなるなどの噛み合わせが原因かもしれないと思われる不調を感じた事から数軒の矯正歯科医と相談を経て、当院を受診されました。

顔貌所見

正貌において顔貌の顕著な左右非対称性は認めませんでした。側貌において口唇の顕著な突出感を認め、オトガイ部の後退感は強く、口唇閉鎖時にオトガイ部軟組織の緊張感を認めました。

口腔内所見

上下顎前歯の前後的なズレを現すオーバージェットが大きく約9.5mm、前歯部の叢生を認めました。一般歯科的問題点として、下顎右側第一大臼歯(下顎右側6番)の歯髄を除去し樹脂をつめる根管治療が施された失活歯の状態でした。

初診時X線写真所見

セファロ(頭部X線写真線規格写真)において上下顎骨の前後的ズレを示すANBは+9°、下顎骨の下方への回転を示すFMAは35°を示し、下顎後退型の骨格的な上顎前突の傾向を認めました。また上顎前歯は唇側に傾斜し、上唇が短く下唇が引き上げられながら口唇が閉鎖している事を確認出来ました。

パノラマX線写真において上顎右側第3大臼歯(8番:親知らず)が存在していることが確認できました。デンタルX線写真では下顎右側6番の根管治療は不十分であるものの明らかな根尖病巣などは認めませんでした。

唾液検査・歯周組織検査

唾液検査では、唾液の分泌量は5mlでやや少なく、みがき残しが多いこと(PCR76.8%)、フッ素が使用されていないことでむし歯のリスクは高い傾向を認めました。歯周病のリスクがやや高く、歯肉からの出血(歯肉炎)は臼歯部を中心に認めBOPは13.1%に認めました。

■治療方針

MTMの診療プロセスに則り、初期治療により歯のみがき残しを減少させ歯肉炎の改善を行ない、その後矯正治療を開始する事としました。その結果、PCRは31.3%に減少し、 BOPも1.2%になりました。

矯正治療の方針としては、上下顎骨のズレが大きく上顎前歯を最大限に後退させる必要があると考え、抜歯により空隙を作る必要がある症例と判断しました。抜歯部位は、失活歯である下顎右側6番を残すかどうかで次の2方針を提案しました。

方針1:抜歯部位を上顎左右4番、下顎左右5番、下顎が回転して下顔面が長くなるようであればアンカースクリューを埋入して上顎大臼歯の挺出や上顎前歯の圧下を行う事としました。動的治療期間は30ヵ月と予測しました。

方針2:上顎の抜歯部位は方針1と同じ上顎左右4番、下顎は右側を失活歯である6番、左側は方針1と同じ5番としました。歯を動かす期間は方針1に比べて12ヵ月長い42ヵ月と予測しました。

当院としては、下顎右側6番は失活歯であるものの歯質の削除量は少なく、X線写真により根尖部に明らかな透過像(感染による骨の消失)を認めなかったこと、臨床症状がなかったことにより、下顎右側6番を保存する方針1を提案しました。

非対称な抜歯部位となることで咬合がやや不安定になることを予測模型により説明し、失活歯の将来の喪失リスクを説明した結果、Iさんは方針1を選択されました。

■動的療開始時

上顎に唇側から矯正装置を装着し治療を開始しました。

■ 動的治療終了時

顔貌・口腔内所見

側貌における口唇の突出感及び口唇閉鎖時の緊張感は軽減しました。
口腔内所見において上下顎前歯の前後的なズレおよび叢生は改善され、臼歯関係もアングルI級で安定しました。

X線写真所見

動的治療後の評価では、パノラマX線写真において歯根平行性の問題や全顎的な歯根の明らかな吸収などは認められませんでしたが、前歯部の根尖では軽度の歯根吸収による根尖の平坦化を認めました。セファロX線写真において、上下顎前歯の後退による口唇の後退を認めました。臼歯や前歯の挺出による下顎の回転、下顔面高の増加などは認めませんでした。

■ 動的治療前後の比較







■う蝕(むし歯)と歯周病のトータルリスク比較

う蝕のリスク評価としてカリオグラムを行っています。カリオグラムは、歯科先進国スウェーデンのスウェーデン王立マルメ大学う蝕予防学教室のグンネル・ペターソン博士によって開発され、その予後の妥当性について多くの論文で評価されて信頼度の高いう蝕リスク診断プログラムです。

歯周病のリスク評価としてOHISを使用しています。OHISは歯科先進国アメリカのワシントン大学歯学部教授ロイ・C・ページ先生を中心とした歯周病専門医のグループによって開発されて歯周病のリスク診断プログラムです。

う蝕のリスク比較

う蝕のリスクは初診時「10」→動的治療終了時「4」とリスクが減少しました。また、カリオグラムによる1年以内にう蝕を避ける可能性は初診時「25%」→動的治療終了時「90%」と上昇(う蝕になるリスクは減少)しました。う蝕のリスクが大きく低下した理由として、メインテナンスと家庭でのフッ素使用が定着した事、咬合が改善し、咀嚼しやすくなって唾液分泌量が増加した事が要因と考えられました。

初診時カリオグラム

動的治療終了時カリオグラム

カリオグラムによる「う蝕を避ける可能性」の変化

*「う蝕を避ける可能性」は上昇しう蝕のリスクは減少している

歯周病のリスク比較

歯周病のリスクは初診時「10」→動的治療終了時「4」に変化し減少しましたが、OHISでは病状が初診時「7」→動的治療終了時「9」、リスクが初診時「2」→動的治療終了時「3」に増加しました。これは、OHISの評価ではX線写真により歯を支える骨の減少と、臼歯部の根分岐部に骨吸収を認めた事を評価したためと考えます。

OHISでのリスク変化

PCR、BOP、4mm以上のポケットの比較

・PCR(むし歯と歯周病の原因菌の付着を示す歯の磨き残し)
・BOP(歯周病の原因菌による炎症を示す歯肉からの出血)
・4mm以上の歯周ポケット(歯周ポケットが4mm以上になると歯周病の原因菌による歯槽骨の破壊)

5分間刺激唾液分泌量の比較

■考察

治療方針について

Iさんには失活歯を保存する方針1と失活歯を抜歯する方針2を提案しました。当院の理念はホームページにも掲載さているように「命を輝かせる歯を生涯に渡り守り、あるべき歯科医療を実現させる」であり、そのために矯正治療学的な診断に基づき抜歯による矯正治療が必要だとしても、矯正治療後に残した歯が生涯に渡り機能する事を第一の目的にしています。

失活歯(歯の神経をとった歯)は、治療した後に感染しても再治療が不可能となる場合が多く最終的には抜歯となる可能性が高い歯です。そこで、抜歯による矯正治療が必要と判断したIさんの症例では、下顎右側6番の失活歯を抜歯する事を検討しました。下顎右側6番は歯の根が2根、近遠心径(前後径)が約12mm あり最も大きな歯であり、抜歯するとそのスペースを叢生の改善だけでは余ってしまうので前後の歯の移動で閉鎖する必要があります。成長期にある患者であれば移動に時間がかかったとしても閉鎖が可能な場合が多いです。また、健全な親知らずがあれば親知らずを移動して代替えをさせる事も可能です。
当院インタビュー21参照

しかし、本症例は成長の終了した成人症例であり、大臼歯の抜歯スペースを閉鎖する歯の移動にかなりの時間がかかる、もしくは移動しきれずにスペースが残る可能性がある、親知らずはすでに抜歯されていた事で親知らずの利用は出来ないと考えました。さらに、不完全な根管治療(歯の神経の治療)ではあるものの本来の歯を大きく削って根管治療を行っていないので、今後感染が確認された際にも再根管治療のチャンスがあると考え失活歯を保存する方針1をお勧めしIさんも同意してくださいました。保存した下顎右側6番は動的治療終了時から保定中の現在までに症状が出ていませんのでこの診断は適切だったと考えられますが、本当の評価は生涯に渡って歯が残せるかどうかでしかできないので、今後もメインテナンスを続け守りながら経過観察を続けます。

動的治療に伴う変化について

Iさんは骨格的な上顎前突で上下顎前歯の前後的なズレを示すオーバージェットも9.5mmと大きく、上顎前歯を大きく後退させなければいけない症例です。上顎前歯を後退させる際に、上顎前歯が挺出し笑った時に歯肉が強調されるガミースマイルになったり、下顎骨が回転し下顔面高が大きくなる(顔が長くなる)変化が現れる事があるのでアンカースクリューを使用し大臼歯や前歯の挺出を防ぐ事を治療方針に含めました。
当院インタビュー7参照

しかし、動的治療中に挺出やガミースマイルの変化を確認したところ、明らかな挺出や下顎骨の回転も認めなかったためアンカースクリューを使用せずに動的治療を終える事が出来ました。治療後のセファロの重ねあわせでも下顎骨の回転は認めず、顔貌写真においてもガミースマイルは認められませんでした。

また、矯正治療開始前に顎がガクガクするなどの症状を感じられていましたが、矯正治療期間中に顎関節の不調などは現れずに動的治療を終了する事が出来ました。顎の不調和は噛み合わせだけが原因ではありませんが、矯正治療は悪影響を与えなかったと考えられました。

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