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インタビュー38/Tさん「上顎右側1番の埋伏 上突咬合 両突歯列 叢生歯列弓 下後退顎」

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見た目が気になる気持ちを理解し 親身に対応してもらえて嬉しかった

Tさん「上顎右側1番の埋伏 上突咬合 両突歯列 叢生歯列弓 下後退顎」

OPひるま歯科 矯正歯科に通院するようになったきっかけを教えてください。

小学生の頃、乳歯から永久歯に歯が生え変わる時に、右上の1番の永久歯がなかなか出てこなかったんです。かかりつけの歯科医院で乳歯を抜いてもらって様子をみていたのですが、それでも一向に出てくる気配がなく、先生から「専門の歯科医院で診てもらってください」と言われて足を運んだのがOPひるま歯科 矯正歯科でした。

くわしく検査をして晝間先生に診てもらった結果、「永久歯が歯茎の中に埋まったままの状態になっているので、手術で歯茎を切開して埋まっている歯に矯正装置をつけ、正しい位置に出すという治療をしましょう」と言われました。当時8歳だったので細かいことはよく覚えていないのですが、「手術」と言われてとてもこわかったことを覚えています。

実際に手術を受けたときはいかがでしたか。

晝間先生から紹介を受け、母に連れられて立川病院に行きました。手術が始まる前は、麻酔の注射がとてもこわかったし、手術を受けるのはいやだと思っていたのですが、実際に始まってみると、まず顔全体に布をかけられ、その後麻酔の注射を打たれて「痛い…」と思った記憶しか残っていません。気がついたら手術は終わっていました。局所麻酔だったので、手術後しばらくは口のまわりがもわもわした感じがしていましたが、帰宅してから徐々にいつもの感覚が戻ってきました。麻酔が切れてからも痛みは特になく、ほっとしました。

その後、ワイヤーをつけたのですね。

そうです。歯茎を切開して少し見えるようになった歯にブラケットとワイヤーをつけてもらったのですが、手術の後しばらくは縫合の糸も残っていたし、見た目がすごく気になって早くなんとかしてほしいと思っていました。友だちから何か言われたりしないかと不安で、抜歯するまでは給食以外の時間はずっとマスクをつけていました。

ワイヤーも、つけてから1週間くらいは痛みが強く、やわらかいものしか食べられなかったので大変でした。1週間をすぎるとだんだん痛みに慣れてきましたが、次の月に医院に行ってワイヤーの調整をしてもらうとまた痛くて……。ワイヤーは何より見た目がいやだったし、痛いし、つまった食べ物をとるのが面倒だしで、小学校低学年時代はいい思い出がありません(笑)。母に「痛い」「食べ物をとるのが面倒くさい」などと訴えたのですが、「仕方がないからちょっとがまんしなさい」と諭されていました。

その後、埋まっていた永久歯がだんだん出てきてきちんと並び、見た目も普通の状態になったところで、いったん矯正装置をはずすことになりました。晝間先生から、すべての歯が永久歯に生えかわるまで矯正治療はせずに様子をみていくというお話があり、それからは定期的にメンテナンスに通い、むし歯はないか、歯みがきがちゃんとできているかなどを診てもらっていました。メンテナンスの時は、「奥歯は小さい歯ブラシを使ってしっかりみがく」など、歯みがきの方法を細かく衛生士さんに教えてもらってとても参考になりました。

すべての歯が永久歯に生えかわったあとはどのような治療をしましたか。

12歳の時に永久歯が全部生えそろいました。歯茎に埋まっていた右上の1番の歯はきれいに生えてきたのですが、すべての歯が永久歯になってみると、あごの骨の大きさと歯の大きさのバランスが悪くて全体的にきれいな歯並びにはならず、上の歯が前に出ていました。晝間先生から説明を受けて2回目の矯正治療を始めることをすすめられました。矯正治療は、左右の上の4番と下の5番の歯、計4本の歯の抜歯が必要ですと言われ、不安な気持ちもあったのですが、晝間先生を信頼していたので、治療をすることにしました。

抜歯の時はやはり麻酔の注射がこわくて、いやだなあと思っていたのですが、最初のチクンとした痛みだけであとは大きなトラブルもなく、安心しました。2回目の矯正装置をつけたのは、小学校6年生の終わりごろだったと思います。ちょうど卒業アルバムの撮影をする時期で、ワイヤーをしたまま写真を撮るのがいやだったので、晝間先生に相談したところ、その時だけはずしてもらうことができました。

ワイヤーの痛みについてはいかがでしたか。

一度治療をしていたので、痛みそのものにはもう慣れていたという感じがあり、あまり苦痛ではありませんでしたが、矯正装置をつけている口元の見た目が、以前よりもさらに気になってしまって……。写真を撮るときなどに口を開けて笑うことができず、いつも口を閉じて写っていたし、ふだんは口元を隠すためにマスクをしていました。夏は暑くて苦しいのでしていなかったときもありますが、冬はずっとしていました。食事のとき、ワイヤーに食べ物がひっかかって残ってしまうのもとても気になりました。中学生の時は、学校につまようじを持って行き、給食のあとすぐトイレに行って、歯やワイヤーにはさまった食べ物を取り除いていました。

治療がいやになったこともありましたか。

矯正装置をつけている間は、とにかく見た目が気になって仕方がなかったのですが、母から「高校生になってから矯正治療を始めるともっと気になるし、大変になるから、今のうちにしっかりと治療しておいたほうがいいんじゃない」と言われたことがずっと心に残っていました。「確かに高校生になるともっと気になるかもしれない。治療をするならやっぱり今のうちのほうがいいのかな」と考えるようになり、今治療をがんばれば高校生になったときにきれいな歯並びになる、しっかり治そうと自分に言い聞かせ、がんばって通院しました。

ワイヤーがとれた時は嬉しかったですか。

すごく嬉しかったです。中学校の卒業アルバムの写真を撮る前にワイヤーがとれたので、タイミングもよかったんです。ワイヤーがとれてからは、写真も自然な笑顔で撮ってもらうことができるようになりました。

歯並びがよくなって、まわりの方たちの反応はいかがでしたか。

高校の友だちは、私が中学時代に矯正治療をしていたことを知らないんです。「歯並びがきれいだね」って言われることが多いのですが、「中学生の時に矯正治療をしていたんだ」と言うと、いいなあとうらやましがられますね。やっぱり中学生の時に矯正治療をしてよかった、がんばってよかったと思いました。

今、まわりに矯正治療をしている友だちが結構いるので、自分の経験から、食べ物がワイヤーにつまるから気をつけたほうがいいよ、こうすると楽だよなどとアドバイスしています(笑)。母からも、「きれいになって良かったね」と言ってもらいました。私は4人姉妹の4番目なのですが、私の歯並びが良くなったのを見て、3人の姉も矯正治療を始めました。

OPひるま歯科 矯正歯科で治療してよかったですか?

とても良かったと思います。私はとにかく矯正装置をつけた見た目がいやだったのですが、晝間先生はその気持ちをよく理解してくれて、卒業アルバムの写真撮影の時に矯正装置をいったんはずしてくれたりと、いつも親身になって対応してもらえたのが本当に嬉しかったです。

こちらからの相談にものってくれるし、痛いといえばすぐ診てもらえるので、安心して治療に通うことができました。矯正治療をはじめる前は、ワイヤーをつけるのがいやで、見た目のことばかり気にしていましたが、治療をして歯並びがよくなったときの感動を思うと、頑張って通院して良かったと思います。OPひるま歯科 矯正歯科では、歯のみがき方やお手入れの方法についてもしっかり教えてもらいました。今では、毎日、朝と夜15分くらい、時間をかけてていねいに歯みがきしています。せっかくきれいな歯並びになったので、この状態をずっと保っていきたいと思っています。

1期治療:上顎右側1番の埋伏歯の開窓牽引
2期治療:叢生を伴う上顎前突
1期治療と2期治療を行った症例

診断名:上顎右側1番の埋伏 上突咬合 両突歯列 叢生歯列弓 下後退顎

今回は、小児期(8歳)に上顎前歯の埋伏に対する開窓牽引を行い、その後経過観察とメインテナンスをしながら永久歯の萌出を待ち、その後永久歯列の矯正治療を行ったTさんの症例に対する解説を行います。専門的に小児期の矯正治療は1期治療、永久歯列期の矯正治療は2期治療と呼び、1期治療では萌出障害のある上顎前歯の萌出を促し、2期治療では生涯にわたって安定する歯並びと咬合を創り出す治療を行う2段階の矯正治療について解説します。

【初診時】

■現症および主訴

初診時年齢8歳で来院。一般歯科医により、上顎右側1番の萌出遅延を指摘され乳歯を抜歯したものの萌出してこなかったため、矯正歯科医による顎骨内部にある右側1番の開窓牽引(矯正歯科装置を装着して引っ張る) が必要と指摘され当院を受診されました。

顔貌所見

正貌において顔貌の左右非対称性は認めず、側貌において軽度の下顎後退感を認めるものの顔貌における顕著な不調和は認めませんでした。

口腔内所見

上下歯列の前後的な位置関係にズレは認めませんが、前歯部では永久歯の萌出余地不足が予測され過蓋咬合(前歯の重なりが大きすぎる)の傾向を認めました。主訴である上顎右側1番の萌出部位の歯肉は膨隆してきており顎骨の比較的浅い部位に存在(埋伏)していることが予想されました。

初診時X線写真所見

パノラマX線写真において上顎右側1番の埋伏は確認できるものの歯根の湾曲や吸収などは認められず、その他の歯も明らかな問題を認めませんでした。

初診時唾液検査・歯周組織検査

唾液検査では、歯の磨き残しが多く、むし歯の原因菌であるミュータンス菌も多い傾向を認め、口腔内の環境を中和する唾液の緩衝能は低く、分泌量も少ないという結果や、すでに乳歯のむし歯治療経験があることから、むし歯のリスクは高いことから1期治療で矯正装置を装着する際に注意が必要と考えました。

■治療方針

1期治療では、上顎右側1番の開窓牽引が可能と診断し上顎に部分的な矯正装置を装着し、上顎右側1番以外を固定源として上顎右側1番の牽引を行うこととしました。1期治療の動的治療期間は約10ヵ月と予測し、1期治療後は永久歯の萌出を経過観察しながら永久歯の萌出に伴う叢生の変化、顎骨の成長に伴う咬合の変化を確認すること、う蝕と歯周炎の予防をしながら口腔衛生状態の改善を図ることとしました。1期治療で埋伏の改善はできるものの2期治療が不必要となる症例ではないことを説明し治療に入りました。

■1期治療開始から経過観察

唾液検査の結果に基づき初期治療により口腔衛生状態の改善を行い、その後口腔外科にて埋伏している上顎右側1番の顎骨を除去する開窓を行い、矯正装置の装着を行いました。

1期治療(開窓牽引)開始時

1期治療(開窓牽引)終了時顔貌所見

動的治療期間は予想通りの10ヵ月で上顎右側1番の牽引を行うことができました。1期治療終了後は、上顎前歯部に固定式の保定装置を装着し後戻りを防ぎながら、永久歯の萌出管理のための経過観察とメインテナンスを行いました。

1期治療(開窓牽引)修了時口腔内所見

1期治療(開窓牽引)X線写真所見

■2期治療開始時

永久歯の上下顎第1大臼歯が萌出完了する12歳まで経過観察を行いました。成長変化により臼歯関係はAngle class IIで上顎歯列に対して下顎歯列が後方に位置する傾向を認め、叢生と上顎前歯の唇側傾斜が現れてきたため最終的な矯正治療(2期治療)による改善の希望を確認したところ、希望されたので矯正治療のための精密検査を行い治療方針を決定しました。また、永久歯列が完成した状態で再度唾液検査を行い口腔内のリスクを評価し矯正治療中のリスクの上昇に対応できるか確認してから動的治療を開始することにしました。

2期治療動的治療方針

上下歯列の前後的なズレの改善のため上顎は左右4番を抜歯し上顎前歯の唇側傾斜および叢生の改善、下顎は左右5番を抜歯し叢生の改善と大臼歯の近心移動によりAngle class IIの改善を行う方針としました。前歯の後退量はそれほど大きく取らなくても良いと考えアンカースクリューやヘッドギアなどの加強固定装置は使用しない方針とし、治療期間は約30ヵ月と予想しました。

2期動的治療開始時顔貌所見

2期動的治療開始時口腔内所見

2期動的治療開始時X線写真所見

■動的治療開始時

上下顎の抜歯後、軽度の過蓋咬合であるため上顎から矯正装置を装着しました。

■2期動的治療後

顔貌・口腔内所見

動的治療後の評価では、治療計画通り抜歯スペースにより叢生の改善、上顎前歯の後退により前歯が後退し咬合平面は平坦化し前歯から臼歯まで均一に咬合できるようになりました。前歯の後退とともに鼻骨と下顎骨の成長により口唇の突出感、口唇閉鎖時の緊張感を認めない美しい口元を得る事ができました。下顎の回転による下顔面高の増加なども認められませんでした。動的治療期間は予想に近い29ヵ月でしたが、来院回数は16回でした。

X線写真所見

動的治療後の評価では、パノラマX線写真において歯根の吸収や平行性にあきらかな問題は認められませんでした。セファロX線写真においても動的治療により下顎骨の回転は認められず、動的治療に伴い上顎前歯が後退し、その結果口唇が後退した事が確認できました。

2期動的治療前後の比較

■う蝕(むし歯)と歯周病のトータルリスク比較

う蝕のリスク評価としてカリオグラムを行っています。

カリオグラムは、歯科先進国スウェーデンのスウェーデン王立マルメ大学う蝕予防学教室のグンネル・ペターソン博士によって開発され、その予後の妥当性について多くの論文で評価されて信頼度の高いう蝕リスク診断プログラムです。

う蝕のリスク比較

う蝕のリスクは初診時「16」→2期治療開始時「10」→2期動的治療終了時「12」と変化し、2期治療開始時にリスクが減少したものの動的治療終了時に上昇しました。また、カリオグラムによる1年以内にう蝕を避ける可能性は初診時「8%」→2期治療開始時「80%」→2期動的治療終了時「76%」の高い状態で安定し、虫歯になりにくい口腔内の環境に変わりました。これは、歯の磨き残しが減少し、細菌が減少した事、歯科医院でのフッ素の使用が定期的に行われた事によるものと考えられました。

初診時カリオグラム

2期治療開始時カリオグラム

2期動的治療終了時カリオグラム

カリオグラムによる「う蝕を避ける可能性」の変化

*う蝕を避ける可能性が上昇している事から、むし歯のリスクが減少している事が分かる

歯周病のリスク比較

歯周病のリスクは年齢的にありませんが、プラークの蓄積量が増加し年齢が高くなるに従い歯肉からの出血であるBOPの値が高くなっていくことがわかります。

PCR、BOP、4mm以上のポケットの比較

PCR(むし歯と歯周病の原因菌の付着を示す歯の磨き残し)

BOP(歯周病の原因菌による炎症を示す歯肉からの出血)

4mm以上の歯周ポケット(歯周ポケットが4mm以上になると歯周病の原因菌による歯槽骨の破壊)

5分間刺激唾液分泌量の比較

■考察

子を持つ親の考えとして、小さい時に矯正治療を済ませて歯並びが悪くなることを予防したいと考えることは十分に理解でき、当院でも同様の考えを持つ保護者に連れられて矯正治療の相談に来られる方は多くいらっしゃいます。しかし、歯並びや咬合は顎骨と永久歯のサイズ、上下顎骨の3次元的な位置関係、前歯と口元のバランスなどにより治療のゴールが変わってしまうため、単純に小児期から治療を開始すれば永久歯の矯正治療が不要になるとは言えません。日本歯科矯正専門医学会の歯科診療ガイドラインにも小児期の安易な矯正治療を推奨していません。

歯科矯正領域の診療ガイドライン

しかし、本症例のように埋伏を認め永久歯の自然な萌出が困難な症例では、そのまま放置することで開窓牽引が困難になる場合や萌出が遅れたことで隣接する歯が傾斜したり、対合歯が挺出したりなどの問題が起き、永久歯列が完成してからの矯正治療が困難になるため小児期の矯正治療(1期治療)が重要になるのです。

本症例では1期治療を行った結果、2期治療では動的治療期間が29ヵ月(来院が19回と予定していた回数の約2/3の来院となってしまいました)で治療が終了し良好な治療結果を得ることができました。

また、永久歯の萌出途中は歯が成熟していないためう蝕になりやすい時期でありながら、保護者による仕上げ磨きがなくなり、食生活のバリエーションが増え、歯肉炎なども起きることから口腔内の環境が短期間で大きく悪化する時期です。このような時期に安易に矯正装置を装着することは、むし歯のリスクを上昇するだけとなってしまう場合もありますが、1期治療から2期治療にかけてリスクコントロールをし、患者自身に歯の価値を理解してもらいながら矯正治療を進めることで、患者の歯に対する意識を高めることも可能になります。

本症例でも、最初は親に連れられて消極的だった矯正治療も、綺麗になった歯並びとその過程から歯に対する意識が高まったことが綺麗な歯並びと安定した咬合を得ることができただけではなくTさんの今後の歯の健康に大きなメリットになったと考えます。

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