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症例紹介14/Iさん「中立咬合・両突歯列・叢生歯列」

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Iさん「中立咬合・両突歯列・叢生歯列」

初診時の診断:「中立咬合・両突歯列・叢生歯列」

今回は大学入学と同時に矯正治療を開始した男性のIさんです。
骨格的な不調和や噛み合わせの大きな異常はないものの上下顎前歯が唇側に傾斜して口唇の突出感が強く抜歯による矯正治療および歯科矯正用アンカースクリューによる固定で改善した症例です。

■初診時

現症および主訴

歯並び(上下の歯が前に出ていること)と口元の突出感を気にされて矯正治療を希望されました。

顔貌所見

骨格的に明らかな不調和は認めませんが、アジア人(モンゴロイド)に共通なオトガイの発達が弱い傾向を認めます。上下顎前歯が唇側に傾斜していることで口唇突出感、口唇閉鎖時の緊張感、赤唇部の翻転、口唇閉鎖が完全にできず歯が見える傾向をみとめました。

※以下より画像をクリックすると大きい画像が見れます。

顔貌

顔貌
正面観において
赤唇部が厚く見える口唇の翻転

口腔内所見

上下顎歯列の前後的な位置関係に大きなズレはなく大臼歯関係はAngle class I、叢生は軽度ですが上下顎前歯は唇側に傾斜していました。う蝕のリスクは低くこれまでむし歯の治療経験はありませんでしたが、歯肉からの出血BOPは11.3%で僅かに歯周病のリスクを認めました。

 治療前 上顎

 治療前 右側 治療前 正面 治療前 左側

 治療前 下顎

特記事項

全身的な疾患や顎関節症などはありませんでした。上下顎左右側には第3大臼歯(親知らず)が埋伏していました。

▲埋伏している親知らず
埋伏している親知らず

■ 治療方針

検査の結果から前歯の唇側傾斜により口唇の突出感や口唇閉鎖時の緊張感を認めると考えました。前歯の唇側傾斜の原因は、上下顎骨の前後的な長さ(奥行き)が不足していて顎骨内に歯が並びきらないことによるものと考え、治療方針は通法通り上下顎左右第1小臼歯を抜歯しそのスペースを利用して叢生の改善および前歯の後退を計画しました。

また、前歯が十分に後退し可能な限り治療期間を短縮できるように歯科矯正用アンカースクリューの使用を勧めたところ、承諾されましたので前歯の後退時に使用することとしました。また、動的治療開始前の初期治療により口腔内のPMTC、歯石除去、口腔衛生指導をおこなってから治療を開始しました。

抜歯部位は矯正治療開始前に上下顎第1小臼歯(上下左右4番)とし、親知らず(上下左右8番)は動的治療期間中に抜歯することとしました。動的治療期間は約30ヵ月と予測しました。

■ 動的治療開始時口腔内写真および治療経過

動的治療開始

動的治療開始時 上顎

動的治療開始時 右側動的治療開始時 正面動的治療開始時 左側

動的治療開始時 下顎

歯科矯正用アンカースクリューを埋入

▲ 歯科矯正用アンカースクリュー▲ 歯科矯正用アンカースクリュー▲ 歯科矯正用アンカースクリュー
歯科矯正用アンカースクリュー

■ 治療結果

動的治療期間

動的治療期間は約27.7ヵ月で予定の期間よりも約2ヵ月短い期間で動的治療を終了できました。

顔貌所見

上下顎前歯が後退したことで口唇の突出感、口唇閉鎖時の緊張感が減少し、口唇の翻転も改善しました。また、下顎骨が回転してオトガイ部(下顎先端部)が前方に移動したためオトガイ部が明瞭になりました。

顔貌

顔貌

口腔内所見

叢生、上下顎前歯の唇側傾斜は改善され、上下顎の全ての歯が効率よく接触する安定した咬合を得ることができました。

治療後 上顎

治療後 右側治療後 正面治療後 左側

治療後 下顎

X線写真所見

パノラマX線写真所見では、歯軸は平行化され明らかな歯根吸収なども認めませんでした。親知らずは抜歯され抜歯後の歯槽骨の状態も良好です。

X線写真

セファロX線写真の重ね合わせにより上下顎前歯が後退し、口唇の突出感、緊張感が改善し側貌における硬組織と軟組織のバランスが改善しました。また、また、歯科矯正用アンカースクリューの使用により大臼歯が圧下され下顎骨は反時計法方向(矢印)へ回転し、下顔面高は短くなりオトガイはより明瞭となりました。

■ 考察

現在、患者さんが矯正歯科治療で治したいと思われる症状の第1位は叢生(八重歯や乱杭歯)です。本症例では叢生は軽度であるものの上下顎の前歯が前突する両突歯列(上下顎前突)の改善を希望されて受診されました。このような症状はアジア系の人種であるモンゴロイドでは多く、一見歯並びとしては悪くなさそうに見えますが抜歯をして矯正治療をおこなう必要があります。また、歯科矯正用アンカースクリューを利用しなくても治療は可能ですが利用することでスペースを閉鎖するステップを減らせたり、ヘッドギアや顎間ゴムなどの患者さんの協力を期待する固定を利用しなくてすんだり、大臼歯の圧下や挺出の抑制により骨格に変化を与えることができます。
本症例は、治療期間の短縮や患者さんへの負担、下顎骨の回転によるより良好な側貌の獲得ができたため利用が効果的な症例でした。また、一般的な矯正歯科医院では歯科矯正用アンカースクリューの植立や除去を他の歯科医院に依頼しますが、ひるま矯正歯科では自院で埋入や除去をおこなえるので患者さんの負担も少なくなるよう努力しています。


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永久歯の矯正治療(Ⅱ期)の目安

治療内容
オーダーメイドのワイヤー矯正装置で治療を実施します。(スタンダードエッジワイズ法)
治療に用る主な装置
マルチブラケット装置、症状により歯科矯正用アンカースクリューを用いる場合もあります。
費用(自費診療)
約1,280,400円~1,472,900円(税込)
※検査料、月1回の管理料等を含む総額
通院回数/治療期間
毎月1回/24か月~30か月+保定
副作用・リスク
矯正装置を初めて装着後は、歯を動かす力によって痛みや違和感が出たり、噛み合わせが不安定になることで顎の痛みを感じる場合があります。
歯を動かす際に歯の根が吸収して短くなる、歯ぐきが下がる場合があります。
治療中は歯みがきが難しい部分があるため、お口の中の清掃性が悪くなってむし歯・歯周病のリスクが高くなる場合があります。
歯を動かし終わった後に保定装置(リテーナー)の使用が不十分であった場合、矯正歯科治療前と同じ状態に戻ってしまうことがあります。 ・
長期に安定した歯並び・噛み合わせを創り出すために、やむを得ず健康な歯を抜く場合があります。