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インタビュー10/Kさん「上突咬合、両突歯列」

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「今後はデンタルドックでメンテナンスを」

Kさん「今後はデンタルドックでメンテナンスを」

矯正治療を考えたきっかけを教えてください

歯並びが悪く、見た目が気になっていたというのもありますが、歯磨きがしづらくてむし歯になることがあり、矯正治療をした方がいいかなと思っていました。高校生の時に、社会人になったら治療しようと考えていたのですが、大学生になってアルバイトである程度貯金ができてきたので始めました。大学4年生の時ですね。

矯正について知識はありましたか

妹が小学生の時に治療をしていたので矯正については知っていました。小学校6年生から2年間、父の仕事の関係で台湾に住んでいたのですが、小学校4年生だった妹が向こうで治療をしていたのです。でも上の歯が並んだところで帰国してしまい、治療がすごく痛かったのでもうイヤと言って日本で治療をしなかったので、今では少し戻ってきている気がします。自分はその頃は歯並びなんて気にしていなかったのでやろうとは思いませんでした。

医院探しはどのようにしましたか

地元が立川なので、インターネットで探してひるま矯正歯科に行きました。他の医院のホームページも見たけど、ひるま矯正歯科のホームページが綺麗で印象が良かったんだと思います。実際に来てみたらホームページの印象通りだったので他の医院には行きませんでした。妹には「痛いよ~」と言われましたが、治療をするというのはもう決めてからおこなったので、躊躇しませんでしたね。

治療で大変なことはありましたか

装置を着けて歯が動くときに痛いと皆さん仰いますが、そういう痛みはほとんどありませんでした。ただ、抜歯は痛かったです。もう6年ぐらい前のことになりますが、抜歯の時の痛さはいまだに覚えていますね。

矯正治療は、装置を着けているというだけでそんなに違和感もないし普通に過ごせました。大学生でしたが、まわりに矯正している人もいたし、昔やってたという人もいて、皆「やってるんだ」ぐらいの反応ですね。目立たない透明の装置だったし、話すときにそんなに歯が見えるわけでもないので外見も気にならなかったです。途中で就職活動もしているんですよね。特に支障なく無事に就職できました。

食事の時は、確かに食べづらいということがありましたね。焼肉を食べているとき、肉がワイヤーに挟まった状態でのどにいってしまったことがありましたが、あの時は苦しかったです(笑)。

ひとつだけ、途中からゴムをつけないといけなくなって、それがすごく面倒でした。それまでは矯正装置は歯にくっついているので、特に自分で何かをする必要はなかったのですが、食事の時にはずして、食べ終わると歯磨きをして鏡を見ながらつけるのです。上のブラケットと下のブラケットにそれぞれついているフックに引っかけるのですが、慣れるまではすぐにつけられないし、外食をするとつけるタイミングが難しくて…。それでも8割ぐらいはちゃんとやっていたかなと思います。

歯磨きはきちんとしていましたか

やっていたと思います。装置がついて歯磨きしづらいのですが、もともと歯並びが悪くて歯磨きが難しかったので同じような感じですね。今はリテーナーも外れて、磨きやすくなりました。ただ仕事が忙しくてついフロスをやり忘れることがあります。

装置がとれた時は嬉しかったですか?

嬉しかったです。はずれた直後は何もないのが逆に違和感だったりするんですよね。すぐに慣れますが。リテーナーになると下の歯の裏側に着いているだけなのでほとんど気になりません。上は着脱式の装置ですね。それはちゃんと着けていました。

リテーナー終了後、何か違和感はありますか?

なにもないですね。昔は食べ物がよくはさまっていました。必ずはさまるところがあって、それがイヤだったけど、今はそんなこともないし、歯も磨きやすくなったのでとても楽ですね。定期的に診ていただいているので安心だし、後戻りもないと思います。

ひるま矯正歯科スタッフの印象はどうでしたか

いつも丁寧に対応してくれたので、綺麗にしてくれると全面的に信頼してお任せしていました。治療中は、毎回必ず今の状況とか、治療のこと、今後の見通しなどを説明してくれるので、不安になったり疑問に思ったことはありませんでした。

今後はどのようにメンテナンスしていきますか

今は定期的にクリーニングしてもらって、歯が動いていないか診ていただいています。今後は、デンタルドックでメンテナンスをお願いしようと思っています。やっぱり毎日忙しく過ごしていると、歯に対する意識が低くなっていって、ついサボったりしてしまう。普通の歯医者さんはむし歯になってから行くという感じで、何もないときには行けないけれど、ひるま矯正歯科にはデンタルドックがあるので、定期的に通院して診てもらって、自分の意識も高めていこうと思います。今日もクリーニングしてもらったので、今晩からまたフロスも再開します。

初診時の診断:「上突咬合、両突歯列」

今回はKさんにインタビューを受けていただきました。症状は上顎歯列が下顎歯列に対して前方に位置するAngle class II 上突咬合(上顎前突)で上下顎前歯の重なりが大きい過蓋咬合を呈しています。抜歯による矯正治療をおこない、インタビューでは初めての保定完了(リテーナー終了)までおこなった後のインタビューとなります。

■ 現症

顔貌所見

※以下より画像をクリックすると大きい画像が見れます。

顔貌

側貌において、上下顎骨の前後的な位置に大きなズレはなく、鼻やオトガイの高さもあるため口唇の突出感はわずかでしたが口唇閉鎖時の緊張感を認めます。下顔面が短い傾向も認めました。

口腔内所見

上下顎前歯部に叢生を認め、犬歯臼歯ともに上顎歯列が下顎歯列に対して前方に位置するAngle class II (特に右側は強いAngle class II )の傾向を認めます。むし歯の治療による修復が多数の歯に施されていました。

上突咬合、両突歯列 治療前 上顎

上突咬合、両突歯列 治療前 右側上突咬合、両突歯列 治療前 正面上突咬合、両突歯列 治療前 左側

上突咬合、両突歯列 治療前 下顎

X線写真所見

パノラマX線写真により第3大臼歯(親知らず )の埋伏、歯根の湾曲および短根をみとめました。特に右上5番(印)の歯根は短い傾向を認めました。

X線写真

唾液検査結果

修復した歯は多いものの、むし歯の原因菌は少なくその他のリスクも低かったため、メインテナンスをしっかりとおこないホームケア(ブラッシング方法やフッ素の使用方法)の指導をおこなえばむし歯の進行は最小限にできると考えました。修復物には辺縁不適合による着色も認められましたが二次う蝕が発生した場合に増殖するLB菌が増殖していなかったため積極的再修復をおこなわずホームケアの指導および徹底したPMTCによる口腔衛生状態の改善後(初期治療後)に矯正治療を開始する方針としました。当時(2005年)は、矯正治療開始前の歯周組織検査をおこなっていなかったため歯周病のリスクは不明です。

■ 治療方針

上下顎歯列の前後的なずれ、叢生の改善、上顎前歯の突出による口唇閉鎖時の緊張感の改善のために上下顎左右第1小臼歯(4番)の抜歯をおこない、上顎の大臼歯は近心(前方)に移動しないように最大限の固定、下顎の大臼歯は積極的に近心に移動させるようにして上下歯列の前後的なずれを改善する(Angle class II をAngle class I にする)ようにしました。

抜歯部位を決定するにあたり上顎右側および下顎左側では抜歯部位の変更を以下の理由で検討しましたが最終的には変更をしませんでした。

上顎右側の抜歯部位について右上5番は短根であることから上顎右側の抜歯部位を右上4番→右上5番に変更することを検討しましたが以下の理由で変更せず上顎右側の抜歯部位を右上4番としました。

  1. 右側は臼歯関係が前後的なずれの大きいAngle class II であり動的治療期間中に上顎大臼歯が
    予測より近心に移動すると咬合が安定しないため、上顎大臼歯の固定を最大とするために
    抜歯部位は右上4番とした。
  2. 短根が動的治療後にさらに進む可能性も考えられたが、生涯にわたりメインテナンスを継続す
    ることで保存は可能であると考えた。

下顎左側の抜歯部位について左下5番にインレーが装着されていたので下顎左側の抜歯部位を左下4番→左下5番に変更することを検討しましたが以下の理由により変更せず下顎左側の抜歯部位を左下4番としました。

  1. 左下4番の舌側咬頭が未発達であり左下5番を抜歯すると動的治療後にしっかりとした噛み合わ
    せ(咬頭嵌合)が得られにくいと考えた。
  2. 左側は臼歯関係が軽度のAngle class II であるため大臼歯の移動量を上下で大きく差を付ける必要
    がないため上下同名歯の抜歯が良いと考えた。
  3. 唾液検査の結果からむし歯のリスクが低いと考えられたのでインレーであってもメインテナンスをし
    ていけば長持ちさせられると考えた。

動的治療期間は約30ヵ月、その後の保定期間(リテーナー装着期間)は約24ヵ月を予定しました。

■ 動的治療開始後の口腔内写真

上突咬合、両突歯列 治療開始後 右側上突咬合、両突歯列 治療開始後 正面上突咬合、両突歯列 治療開始後 左側

■ 動的治療後の評価

動的治療期間は予測を超えて約35ヵ月かかりました。治療期間が予測期間より長くなってしまった理由は臼歯のAngle class II の改善に予想よりも時間がかかってしまったためと考えられました。

顔貌所見

矯正治療完了後の顔貌

前歯の後退により、口唇の突出感や緊張感は改善し自然な口唇閉鎖が可能となり審美的にも良好な側貌になりました。

口腔内所見

治療計画通り上顎大臼歯は最大限の固定によりあまり近心に移動させず、下顎大臼歯を積極的に近心移動したことで上下歯列の前後的な位置関係は改善し臼歯関係は左右対称なAngle class I になりました。上下顎歯列は左右対称のアーチ型となり、咬合平面は平坦化し前歯から臼歯まで歯の高さがそろい、咀嚼時に上下の歯が全体で同時に接触する安定した咬合関係を得ることができました。上顎前歯は後退し、上下歯列の叢生は改善され、過蓋咬合も改善されました。
むし歯や歯周骨の吸収、歯肉退縮の進行は認めませんでした。

上突咬合、両突歯列 終了後 上顎

上突咬合、両突歯列 終了後 右側上突咬合、両突歯列 終了後 正面上突咬合、両突歯列 終了後 左側

上突咬合、両突歯列 終了後 下顎

X線写真所見

セファロのX線写真所見でも上顎大臼歯は固定され前歯が後退し、口唇の突出感が改善されていることがわかります(後述)。パノラマX線写真では右上5番の歯根吸収がわずかに進行したことが確認できました。第3大臼歯は埋伏したままで大きな位置の変化はありませんでした。

X線写真

唾液検査結果

むし歯の原因菌は依然として少なく、歯の磨き残しは減少し、唾液分泌量は増加しう蝕のリスクは矯正治療開始前に比べて減少しました。

保定期間のメインテナンス計画

保定期間は動的治療期間に比べ来院間隔が3~4ヵ月に一度に開いてしまい動的治療期間中におこなっていたフッ素洗口の間隔も開いてしまいます。唾液検査結果ではフッ素の家庭での使用が不十分であったため、家庭での使用をしっかりとおこなっていただくように指示しました。また、ホワイトニングをおこないメインテナンスで歯の健康を維持するだけでなく歯の白さも改善し維持するようにしました。左右上6番、左下6番は修復物の不適合によりフロスが引っかかり、咬合の変化による咬合面形態の変更が必要と判断しましたので再修復としました。

■ ホワイトニング前

ホワイトニング前

■ ホワイトニング後

ホワイトニング後

■ 矯正治療完了後の評価

保定(リテーナーの装着)は約25ヵ月おこないました。

顔貌所見

矯正治療完了後の顔貌

動的治療後から明らかな変化はなく機能的・審美的に安定していました。

口腔内所見

保定期間を通してわずかに前歯の重なりは深くなりましたが、それ以外の問題は認められず保定装置を除去しても叢生や空隙の発生は認められませんでした。

上突咬合、両突歯列 保定後 上顎

上突咬合、両突歯列 保定後 右側上突咬合、両突歯列 保定後 正面上突咬合、両突歯列 保定後 左側

上突咬合、両突歯列 保定後 下顎

X線写真所見

セファロの重ね合わせでも動的治療後に大きな変化はなく安定した状態です。パノラマX線写真でも第3大臼歯は変化していなかったのでこのまま経過観察する可能性が高いと考えています。

X線写真

X線写真

唾液検査結果

保定期間中のメインテナンスにより口腔衛生状態はより良好になりむし歯・歯周病のリスクはさらに減少しました。

むし歯リスク

歯周病リスク

むし歯と歯周病のトータルリスク

■ 考察

本症例は上下歯列の前後的なずれを表すAngle class II を改善するために時間がかかり全体の治療期間が長くかかってしまったものの、抜歯をして矯正治療をおこない、歯並びや噛み合わせが安定し治療開始前に比べて口腔衛生状態が改善する当院での標準的な症例です。

矯正治療により歯並びが良くなるとむし歯や歯周病予防には効果的ですが、長期間に矯正装置を装着することで装置装着期間のむし歯歯周病リスクは上昇します。これらのリスクを放置したまま矯正治療を進めることで歯並びや噛み合わせが良くなることで得られるメリットを十分に得られていない症例にしばしば遭遇します。矯正治療をおこなう際にはメインテナンスを並行しておこない口腔衛生状態を良好に保ちむし歯と歯周病予防をおこないましょう。

また、矯正治療では保定期間中の後戻りが問題視されますが、適切な診断、適切な治療期間をかけた矯正治療では問題となるような明らかな後戻りはほとんど起こりません。後戻りが起こるということは治療方針自体に問題がある可能性があり、特に強引な非抜歯の矯正治療や短期間の矯正治療は著しい後戻りを起こすことがあります。このような場合では治療方針を一からやり直す必要があるため再治療のための治療期間や費用も含めた矯正治療に対する負担は膨大となります。矯正治療の良否は保定期間が終了するまで患者さんにはっきりとは解りませんが、その原因は治療開始前の診断にある場合が多いので耳障りの良い言葉に惑わされず担当医の診断をしっかりと理解して治療を開始することが大切です。


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