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症例紹介9/Kさん「上突咬合・両突歯列・叢生歯列」

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Kさん「予防の大切さを教えてもらいました」

初診時の診断:「上突咬合・両突歯列・叢生歯列」

今回はKさんにインタビューの御協力をいただきました。
上下顎前歯が唇側に傾斜し、口を閉じた時に口唇の突出感を認める症例です。また、口腔内では顎骨に対して歯が並びきらず前歯部の乱ぐい歯(叢生:そうせい)だけでなく、奥歯にも親知らずの萌出に伴う叢生が現われていました。

現症

顔貌所見

口唇閉鎖時の側面顔貌において、力を入れないと唇を閉じられずオトガイ部軟組織にしわがより不自然な口唇閉鎖時の緊張感を認めます。また、Elineに対して上下口唇が突出し口唇の突出感が顕著でした。下顎は小さいもののオトガイ部の発達は比較的良好と思われます。

※以下より画像をクリックすると大きい画像が見れます。

Eline
Elineに対して突出した口元

口唇が突出したことで
赤唇部の厚みが増している
口唇が突出したことで
赤唇部の厚みが増している

正面顔貌において明らかな左右の非対称性はありませんでしたが口唇が突出することで赤唇部が厚くなり口唇突出感が強調されています。

口腔内所見

上顎咬合面:上顎前歯の唇側傾斜、前歯部の叢生、上顎第2大臼歯の頬側転位を認め右側は鋏状咬合になっています。

下顎咬合面:下顎前歯も唇側に傾斜し前歯部の叢生を認めます。

口腔衛生状態は歯と歯の間の磨き残しが多く、そのために初期歯周炎になりプロービング時の歯肉からの出血(BOP)23.8%と高い数値を認めました。

上7番は頬側に転位している
上7番は頬側に転位している

上突咬合・両突歯列・叢生歯列 開始前 右側上突咬合・両突歯列・叢生歯列 開始前 正面上突咬合・両突歯列・叢生歯列 開始前 左側

上突咬合・両突歯列・叢生歯列 開始前 下顎

右側第2大臼歯部の鋏状咬合
右側第2大臼歯部の鋏状咬合

治療方針

診断を上顎の歯列が前方に突出している上突咬合、上下の前歯が唇側に傾斜している両突歯列及び叢生歯列と診断しました。

上下顎前歯の唇側傾斜、叢生の原因は乳歯から永久歯に生え変わる時に永久歯のサイズに対して充分に大きくなる顎骨の成長が起きなかったためです。したがって、顎骨に対してスペースを確保して上下顎前歯を後退させながら叢生を改善する必要があります。

本症例では上下顎左右第1小臼歯(上下左右4番)を抜歯としました。また、パノラマX線写真において上下顎第3大臼歯(上下左右8番)の埋伏を認め、特に上8番の埋伏が上7番の頬側転位の要因となっていると考え上7番をコントロールする前に抜歯する方針としました。

動的治療期間は成人の抜歯症例としては平均的な30ヵ月を予定しました。
また、矯正治療中は口腔衛生の管理が難しくなることから、歯の磨き残しと歯肉からの出血を減少させるための初期治療(歯石除去、PMTC、ブラッシング指導、フッ素塗布及び指導など)をおこなってから装置の装着をおこないました。

上8番の萌出が上7番の傾斜に影響を与えている
上8番の萌出が上7番の傾斜に影響を与えている

動的治療開始時口腔内写真

上突咬合・両突歯列・叢生歯列 開始時 上顎

上突咬合・両突歯列・叢生歯列 開始時 右側上突咬合・両突歯列・叢生歯列 開始時 正面上突咬合・両突歯列・叢生歯列 開始時 左側

上突咬合・両突歯列・叢生歯列 開始時 下顎

治療結果

【動的治療期間】

動的治療期間は29ヵ月で予定の期間よりも僅かに短い期間で終了することができました。これは、Kさんが通院中1回のキャンセルもなく、毎回の治療に遅刻することなく来院されたことで、常に最大限の治療をおこなうことが可能だったことで治療が遅滞なく進んだことによるものと考えられます。

顔貌所見

上下顎前歯が後退したことにより口唇の突出感や緊張感は改善されました。口唇が後退したことで正貌での赤唇部の厚みも減少し理想的な唇の厚みに変化しました。

Eline

 赤唇部の厚みも減少し理想的な唇の厚みに変化

口腔内所見

上下顎歯列の正中が一致し左右の対称性が高い噛み合せになりました。上7番の頬側転位も改善したことで鋏状咬合は改善され最後方臼歯まできちんと咬合できるようにコントロールされ噛み合せは安定しています。

歯肉からの出血は減少し歯肉は引き締まりましたが、下顎前歯部歯間乳頭部の退縮を認めブラックトライアングルができてしまいました。

上突咬合・両突歯列・叢生歯列 終了後 上顎

上突咬合・両突歯列・叢生歯列 終了後 右側上突咬合・両突歯列・叢生歯列 終了後 正面上突咬合・両突歯列・叢生歯列 終了後 左側

上突咬合・両突歯列・叢生歯列 終了後 下顎

7番の頬側転位による鋏状咬合は改善された
7番の頬側転位による鋏状咬合は改善された

X線写真所見

パノラマX線写真所見では、親知らず(上下左右8番)を抜歯したことで上下左右7番の歯軸も真っ直ぐになり歯根も平行に並び良好な歯軸の配列になりました。

X線写真

X線写真所見

側面セファロ(顎顔面規格写真)の動的治療開始前と動的治療後の重ね合わせでは、上顎の大臼歯があまり前方に移動せず上下顎前歯が後退したことで口唇が後退し突出感が改善したことがわかります。また、前歯の後退によりオトガイ部軟組織の厚みが均一化され、治療開始前よりもオトガイが明瞭になり良好な側貌を得ることができました。

【ブラックトライアングルへの対応】

治療の経過とともに歯根が平行かつ等間隔で並ぶように変化し歯と歯の間が適正な間隔に広がります。また、歯石除去やPMTCを繰り返すことで歯肉は引き締まり、結果として歯間鼓形空隙は広がりブラックトライアングルが形成されました。上顎前歯部のブラックトライアングルは歯冠のサイズが大きく歯間形態の影響もあったため前歯部歯冠隣接面を僅かに削ることで対応することができました。下顎前歯は削ってしまうと咬合が不安定になること、審美的な影響は小さいと考えられたことから、患者さんと相談のうえ削らずに経過観察としました。

ブラックトライアングル 経過1ブラックトライアングル 経過2ブラックトライアングル 経過3

動的治療期間中に上顎前歯部(上1番)の隣接面を削り
ブラックトライアングルを減少させた

【むし歯と歯周病のリスク変化】

動的治療開始前に比較し、歯の磨き残しを表すPCRは46.4%から34.2%に減少、歯肉の炎症状態を表すBOP23.8%から0.7%に減少しました。むし歯総合リスクは10から5へ減少、歯周病リスクは6から3へ減少しました。これらの結果から矯正治療開始前に比べて口腔衛生状態は改善されました。

動的治療前後の変化

動的治療前後の変化

【保定開始後】

現在は保定期間中でリテーナーを使ってもらいながら、さらに咬合が安定するように調整しており、歯並びの後戻りなどは認めず経過は良好です。

むし歯や歯周病のリスクは矯正治療開始前よりも低下したものの磨き残しが多かったため再度口腔衛生指導やPMTCをおこないました。

考察

最も患者さんが矯正治療で治したいと思う歯並びの異常は、前歯の突出感や叢生です。本症例のKさんも同じような思いで矯正治療を希望されました。しかし、見た目だけでなく歯本来の機能を十分に発揮するためには奥歯の噛み合せもしっかりとし、歯周病なども管理されていなくてはなりません。したがって、Kさんの矯正治療では前歯をしっかり後退させて突出感を改善するだけでなく、Kさんが気付いていなかった奥歯の傾きを補正する精密な矯正治療、矯正治療開始前及び治療中の歯周病予防を中心とした口腔衛生管理もおこなわなければなりませんでした。

患者さんが気にしている部分だけでなくさらに口腔内をより良い状態にするためにはKさんにおこなわれた様な矯正治療や予防管理をおこななうことで可能となります。近年インターネットを通して流行っている、短期間の矯正、非抜歯矯正、見えない矯正、マウスピース矯正、床矯正などはこの様な治療には不向きなタイプの矯正治療で私たちは自信を持って患者さんにお勧めすることができません。皆さんもKさんと同じように耳障りの良い情報に惑わされず正しい治療を理解し選択され、良い治療結果を得られる様にして頂ければ嬉しく思います。

また治療とは関係ありませんが、Kさんは当院で治療を開始してから歯科医院に勤務されたそうです。一歯科医療人として仲間が増えたことはとても嬉しく思います。これからは同業者のKさんから見ても満足していただけるようなメインテナンスをしてKさんの口腔内を健康に保っていきたいと思います。


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永久歯の矯正治療(Ⅱ期)の目安

治療内容
オーダーメイドのワイヤー矯正装置で治療を実施します。(スタンダードエッジワイズ法)
費用(自費診療)
約1,164,000円~1,339,000円
※検査料、月1回の管理料等を含む総額
通院回数/治療期間
毎月1回/24か月~30か月+保定
副作用・リスク
歯根吸収が起きる可能性があります