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ドキュメンタリー矯正治療 / ステップ6

矯正治療開始の痛み

いよいよ矯正治療(歯を動かす治療)が始まりました。矯正治療が始まり患者さんが一番ビックリする!(困る)のは、歯を動かす痛み、歯の磨きにくさです。
そこで今回と次回の ドキュメンタリー矯正治療 では二回にわたり


質問1:矯正治療開始してから1週間までの痛みは?
質問2:歯みがきのプロでも装置が入ると、どのくらい磨き残しをしてしまうの?


という疑問にお答えしたいと思います。

痛みの原因

なぜ?矯正治療で歯を動かすと、痛くなるの?

実はこの謎は完全に解明されていません。

ただし現在有力な説は、“歯の移動に伴う組織破壊と修復による炎症反応”“移動に伴い歯髄内の血管が圧迫され血行障害”が起きると考えられています。

? ちょっと分かりにくいですよね。

ではまず始めに、歯の移動に伴う炎症反応がどの様に起きているか説明しましょう。

炎症に伴う痛み

歯は、お口の中に見えている部分と、顎の骨に埋まっている部分に分かれています。このお口の中に見えている部分を歯冠(しかん)、歯肉や顎の骨の中に埋まっている部分を歯根(しこん)といいます。矯正治療は歯冠にブラケットを接着し、ワイヤーを通して歯根に移動する力を加えています。この歯根は歯を支えている骨(歯槽骨:しそうこつ)に支えられています。しかし、直接歯根と歯槽骨が接触しているのではなく、歯根は歯根膜という靭帯(アキレス腱のようなもの)に覆われています。実はこの歯根膜が、クッションの役割をしてくれているので、すごく固いものを咬んでも、歯が割れることを防いだり、顎に衝撃が直接加わらないようになっているのです。

各部位の説明

この歯根膜は、食べものを咬んだりする時の一時的に加わる強い力では、歯を動かすような変化を起こしません。しかし、弱い力を長期間かけると、顎の骨の細胞を変化させ歯を動かします。この時、歯根膜は圧迫される側(圧迫側)と引っ張られる側(牽引側)に分かれます。そして、圧迫側には歯を支えている歯槽骨を吸収する細胞(破骨細胞:はこつさいぼう)が現れます。反対の牽引側では歯槽骨を作る細胞(骨芽細胞:こつがさいぼう)が現れます。歯は動く時に、顎の骨一度破壊しそして新しい骨を作りだしながら動いているのです。

矯正力による歯の移動による状況矯正力による歯の移動による状況

今ある歯槽骨が破骨細胞により破壊されたり、骨芽細胞により作られる時、顎の骨の中では炎症が起きています。
炎症とは、転んでひざをぶつけて腫れたり痛みが出ますよね。何かの刺激により細胞が壊れ、修復されていく過程のことを炎症と呼びます。

転んだりした訳でも無いのに細胞を壊して、新しく強い細胞を作り出す時に現れる痛みって何かに似ていると思いませんか?
私は、“筋肉痛”に似ていると考えています。
筋肉痛は、運動や筋力トレーニングをした直後には現れず、数時間から数日経ってから現れますよね。筋肉痛も運動やトレーニングにより負荷をかけ、今ある筋肉(細胞)を一度壊し、新しく強い筋肉(新しく強い細胞)に生まれ変わることで生じる痛みです。
筋肉痛と同様に、歯の痛みも、歯を動かした直後ではなく、数時間後から現れ、数日続きますが、辛いばかりでは無いようです。矯正治療を楽しんでいる方は、この痛みが歯を動かしている実感になって嬉しいのだそうです。そういえば私も筋力トレーニングをしていた頃は、筋肉痛があると「鍛えられてる?」と感じて嬉しかったものです。

このように、歯の痛みの原因の1つは、歯が動くことにより歯根周囲・歯槽骨で細胞の変化が起こり炎症によるものです。

血行障害に伴う痛み

次に、血行障害による痛みについて説明します。
歯はあんなに硬い組織なのに、内部は血管や神経の柔らかい組織で満たされています。

歯の外部は、硬いエナメル質・象牙質、内部は神経や血管が通っている歯髄からできています。よく皆さんが「むし歯で神経を取ったよ」という“神経”とは、歯髄のことです。本当は神経だけでなく血管も含まれているのです。
歯も他の臓器と同様に血管から栄養を受け取らなければ死んでしまいます。歯の固い部分が栄養を受けているのは歯髄からですが、その歯髄は顎の骨から血管を通して栄養を受けています。その歯髄への血管の取り込み口が、歯の根の先にある針の先ほどの小さな穴、根尖孔です。

各部位の説明各部位の説明

矯正治療により、歯を動かすと歯は血管や神経がつながったまま動きます。しかし、歯の動き始めには血管や神経を引き伸ばす力が加わります。そのため、血管の中で、血の流れが悪くなります。血の流れが悪くなることで老廃物が血管内にたまってしまいます。老廃物は細胞にとってゴミですから、ずっと溜めておくと細胞にとっては有害なものとなり、一時的な痛みとなって現れます。そして、歯の動きが落ち着き、血の流れが元通りになると老廃物は体内を駆け巡り、心臓に戻り、きれいになって帰ってきます。そして、痛みが無くなるのです。

この痛みは何に似ているのでしょうか?
これは“肩凝り”や正座していた時の“足のしびれ”に似ています。どちらも、血の流れが悪くなったり、神経が圧迫されたことにより痛みが現れます。そして、この痛みは時間が経つと治っていきますよね。これは時間とともに血の流れが元通りになったためです。

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永久歯の矯正治療(Ⅱ期)の目安

治療内容
オーダーメイドのワイヤー矯正装置で治療を実施します。(スタンダードエッジワイズ法)
治療に用る主な装置
マルチブラケット装置、症状により歯科矯正用アンカースクリューを用いる場合もあります。
費用(自費診療)
約1,280,400円~1,472,900円(税込)
※検査料、月1回の管理料等を含む総額
通院回数/治療期間
毎月1回/24か月~30か月+保定
副作用・リスク
矯正装置を初めて装着後は、歯を動かす力によって痛みや違和感が出たり、噛み合わせが不安定になることで顎の痛みを感じる場合があります。
歯を動かす際に歯の根が吸収して短くなる、歯ぐきが下がる場合があります。
治療中は歯みがきが難しい部分があるため、お口の中の清掃性が悪くなってむし歯・歯周病のリスクが高くなる場合があります。
歯を動かし終わった後に保定装置(リテーナー)の使用が不十分であった場合、矯正歯科治療前と同じ状態に戻ってしまうことがあります。 ・
長期に安定した歯並び・噛み合わせを創り出すために、やむを得ず健康な歯を抜く場合があります。