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インタビュー18/Oさん「中立咬合、両突歯列、叢生歯列、下後退顎」

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仕事に支障なし!新しい経験で面白かった

Oさん「中立咬合、両突歯列、叢生歯列、下後退顎」

矯正治療を考え始めたのはいつごろですか

子供のころから前歯が飛び出していたのを気にしていて、母も矯正をした方がいいと言っていたのですが、その時には治療をしませんでした。20代の終わりごろに親知らずを3本抜歯したあとに、噛み合わせが変わってしまったのか、違和感を感じるようになったのです。通訳の仕事をしているのですが、発音が変わった気がして。周りの人に聞いてもらったら、以前と変わらないと言われましたが、自分ではどうしても気になってしまい、矯正治療をすることにしました。

医院探しはどのようにされましたか

かかりつけの歯医者さんが、ご自身の家族が矯正治療をして良かったとのことで、ひるま矯正歯科を紹介してくださいました。他に、親知らずを抜いた大学病院と、自分で探した矯正歯科を検討しました。大学病院は、患者さんの数が多く、予約が取りづらかったのと、やはり学生さんに教えるという場でもあるので、雰囲気がこわいところがありました。もうひとつの矯正歯科は、家の近くだったのですが、何台かある診察ユニットの間の仕切りがなくて、なんとなく居心地が悪い感じでした。また、先生に質問をしても具体的な答えが返ってこないので、どうかなと。3軒目にひるま矯正歯科に来たのですが、とても綺麗な医院で、先生に質問をすると写真を見せながら、具体的な回答をしてくださいました。歯医者さんの紹介でもあったし、ここは良さそうだと思い、治療することに決めました。

治療方針を聞いていかがでしたか

検査をしてから治療方針の説明をしていただいたのですが、インプラントアンカーを使った方が効果が高いということを聞いた時には恐怖感がありましたね。4本抜歯するというお話もあったのですが、顎が大きくないので仕方ないなとすぐに納得して。抜歯よりもインプラントアンカーで頭がいっぱいになりました。インパクトが強かったです。晝間先生の説明では、前歯を後ろに移動させていくのに、奥歯を固定しておかないと奥歯も前に移動してしまうので、インプラントアンカーで奥歯を後ろに引っ張っておくというようなことでした。インプラントアンカーを使わない方法も提示されましたが、ヘッドギアをつけるとのことで、仕事もあるしそれは無理かなと。とにかく骨にネジを埋め込むというのが、こわかったですね。痛みを感じない場所だからと言われましたが、痛くないところなんてあるのかしらと思って(笑)。治療前に、矯正をしたことのある友だちにいろいろ話を聞いていましたが、さすがにインプラントアンカーについては誰も教えてくれませんでした。(笑)でもどちらにしても矯正治療を始めて歯が動いてからなので、考える時間はありますとのことだったので、始めてみることにしました。

矯正装置がついて、仕事への支障などはありましたか

それをとても心配していました。でも最初のうちはワイヤーが引っかかることがありましたが、特に影響はありませんでしたね。発音も以前通りにできていました。

他には、矯正していることをどんなふうに見られるかということも考えていたのですが、自分が慣れれば気にならないということがわかりました。周りの人はあまり気にしませんね。お客さまは外国人の方が多いのですが、アメリカ人の人にすごく面白がられて見せてと言われたことがありましたが、自意識過剰だったと思いました。(笑)

治療で大変だったことはありましたか

仕事で、食事のときにも張りついて通訳をしながら、自分も食事をするというときがあるのですが、その時はちょっと歯みがきに…とは言えないので困りましたね。皆さん食事のときに仲良くなったりするので、食事時の通訳も大事なんですね。ワイヤーに食べ物がはさまっているのに気づいても気づかないふりで話したりしていました。

あとは、装置をつけてから2ヵ月ぐらい、ずっと口内炎が続いていました。装置が擦れるところにできるので、ワックスを塗ったりもしましたが、仕事中話しているので、効果がなくて。それを晝間先生に相談したのですが、先生は、もちろん、装置とかワイヤーのせいもあると思うけれど、食生活や疲労などの違う原因もあるかもしれないねと仰ったんです。それを聞いてハッとしました。確かに、仕事が不規則なので夜更かししたり、食事のバランスが悪かったりということがありました。それを矯正のせいだけにしていた!と気がついたんです。もし生活習慣に気をつけていたら、口内炎になってもすぐに治るんですよね。それは自分でやらなきゃと思って、とりあえず運動しようとエクササイズのDVDを買っちゃいました。そうして健康に気をつけるようになると、口内炎もできなくなりました。口の中も慣れてきたんだろうけど、相乗効果なんじゃないかなと思います。

実際にインプラントアンカーを打ったときはどうでしたか

そうですね。そのころには、ずいぶん矯正治療に慣れていたので、こわいけれど、やってみたいというふうに気持ちは変わっていました。だから「やってください」とすぐに言いました。

打つのもひるま矯正歯科でやってもらいました。最初に晝間先生がこれを入れますと見せてくださるのですが、小さくて驚きました。ピアスみたいな感じですね。麻酔をしてもらって、頭を固定して、入っていくのはコリコリコリコリっていう音がするだけで痛みはありません。麻酔が切れてからも痛みはなく、その後もほとんど気になることはありませんでした。こんなに小さいのに、奥歯をガッチリ固定して、やっぱりやるとやらないじゃ全然違うんだな、やって良かったと後から思いました。

リテーナーは支障がありませんでしたか

リテーナーになると、上顎にも装置がかかるので、また発音が心配でした。仕事では私はマイクを使って話すし、お客さんはイヤホンで聞くので、かなり細かいところまで分かってしまうんですね。晝間先生に、リテーナーを仕事中だけはずすとすると、どれぐらいで動いてしまうんですかと質問したら、これが案外簡単に動くんですよね、と仰ったので、これは絶対にはずせない!と思って。(笑)結局、発音にも支障がなく、つけたままで大丈夫でした。今では、治療前と比べて格段に発音しやすくなったと感じています。

ひるま矯正歯科で治療をしてよかったですか

とてもよかったです。先生からしたらとても素人っぽい質問をたくさんしたと思いますが、いつも真面目に答えてくださるし、細かいことでもこれから何をするか教えてくれるので、不安なことはひとつもありませんでした。

矯正治療に関しては、痛みや不便なこともあるけれど、それらもすべて新しい経験なので、面白かったなというのが感想です。私の場合は、それまでやったことのない矯正治療というのものにチャレンジしたということで、世界がぐっと広がったという感じがしています。思わぬ人からアドバイスをもらったり、知らなかったことを聞かせてもらったり。やっぱり歯並びが悪いというのはコンプレックスだったのかな、装置がついたら開き直ったというような思いがあって、人との関わり方も変わったような気がします。なにごとも思い切ってやってみてよかったなと思っています。

初診時の診断:「中立咬合、両突歯列、叢生歯列、下後退顎」

今回は、成人の両突歯列(上下顎前突)に対して抜歯矯正をおこなったOさんの症例について解説します。一般的に両突歯列では歯の凸凹(叢生)は目立ちにくいものの上下顎前歯が唇側に傾斜しているため口唇周囲軟組織の突出感や口唇閉鎖時の緊張感が顕著です。また、Oさんは通訳のお仕事もされており発音に対しても高い質を求められたため矯正治療による改善を希望されました。インプラントアンカーと抜歯により上下顎前歯を十分に後退させて、歯並びや噛み合わせだけでなく、口元のバランス、発音も改善した症例です。

■ 現症

【主訴】

歯並び、かみ合わせ、発音の改善。特にここ数年強くなってきた前歯の傾斜の改善。

※以下より画像をクリックすると大きい画像が見れます。

顔貌所見

初診時 顔貌

上顎骨に対して下顎骨が後方に位置し、オトガイ部の後退感が強い傾向を認めます。前歯の唇側傾斜、及び口唇周囲軟組織に対して下顔面高が長いことで口唇の突出感及び口唇閉鎖時の緊張感を認めます。

口腔内所見

骨格の影響により上下顎歯列の前後的な位置関係にズレがあり、上顎歯列に対して下顎歯列がやや後方に位置していました。大臼歯関係は左右ともにAngle class IIの咬合関係でした。叢生は軽度に認められ、咬合平面の湾曲(curve of Spee)も認められました。

一般歯科的所見では失活歯は存在しないものの多数の修復歯を認め、歯肉の腫脹や歯肉の退縮を認めました。う蝕経験歯数(DMF)は12本、口腔衛生状態は歯の磨き残しを示すPCRは34.3%、歯周病の進行状況を示す歯肉からの出血(BOP)は13.6%、唾液検査によるう蝕のトータルリスクは14、歯周病のトータルリスクは9とう蝕・歯周病のリスクが高い状態でした。歯面には隣接面を中心にプラークが付着し、大臼歯により広い範囲のプラークが付着し歯と歯肉の境には炎症による発赤を認めます。

特記事項

全身的な疾患や顎関節症などはありませんでした。

初診時 上顎

初診時 右側初診時 正面初診時 左側

初診時 下顎

X線写真

■ 治療方針

両突歯列・叢生歯列を伴う上突咬合と診断し、上下顎左右第1小臼歯の抜歯により顎骨内にスペースを確保し、叢生、curve of Speeの改善および前歯の後退による口唇閉鎖時の突出感および緊張感の改善も治療目標としました。前歯を最大限後退させるために加強固定としてインプラントアンカーの使用を診断時に説明し、最終的に使用するかどうか矯正治療開始後に希望を確認することとしました。治療に伴う問題点として、成人の矯正治療であり既に歯肉退縮を認めることから歯肉退縮が進行しブラックトライアングルが大きくなる可能性を説明しました。

唾液検査によりう蝕と歯周病のリスクが高いことがわかり、矯正治療開始前の初期治療として徹底したPMTC、歯石除去、ブラッシング指導によるバイオフィルムの破壊、フッ素の使用をおこないPCR30%以下、BOP0%の状態になってから矯正治療を開始することとしました。矯正治療開始後も毎回のワイヤー調整に合わせてPMTC、スケーリングによる歯石除去をおこない、う蝕と歯周病の原因菌によるバイオフィルムを除去して予防を徹底しておこなうこととしました。

■ 動的治療開始時

初期治療により歯の磨き残しおよび歯肉からの出血が減少したので抜歯をおこない矯正治療を開始しました。

動的治療開始時 上顎

動的治療開始時 右側動的治療開始時 正面動的治療開始時 左側

動的治療開始時 下顎

■ 治療結果

動的治療期間

動的治療期間は約30ヵ月でした。調整回数は32回、平均的な来院間隔は0.9ヵ月で遅刻やキャンセルもなく治療に対して非常に協力していただけました。

顔貌所見

動的治療後 顔貌

小臼歯の抜歯により上下顎前歯が後退したことで上下口唇の突出感および口唇閉鎖時の緊張感が改善し側貌においてElineの内側に上下口唇が入るバランスの良い側貌を得ることができました。

口腔内所見

上下顎左右の臼歯関係はAngle class Iになり左右の臼歯関係は対称になり、curve of Speeも改善され咬合平面は平坦化し全ての歯が効率よく接触できる状態になりました。下顎左側第2小臼歯(左下5番)の歯肉退縮が進み歯根が露出してしまいましたが歯の動揺などは認めませんでした。

上顎左側側切歯(左上2番)は動的治療期間中に打撲により変色していますが電気歯髄診では生活反応を認めるため歯髄に対する処置はおこなっていません。インプラントアンカーは動的治療終了時の検査で問題のないことを確認した後に除去しました。

動的治療後 上顎

動的治療後 右側動的治療後 正面動的治療後 左側

動的治療後 下顎

X線写真所見

パノラマX線写真所見では、明らかな歯根吸収などを認めず歯根も平行に配列されています。左上2番根尖部に透過像、左下5番近遠心歯槽骨吸収等も認めませんでした。

セファロX線写真の重ね合わせにより上下顎前歯が後退し上下口唇の突出感が改善し側貌における硬組織と軟組織のバランスが改善したことを確認できました。

X線写真

セファロ重ね合わせ

初診時 動的治療後の比較

初診時 顔貌   動的治療後 顔貌

初診時 顔貌   動的治療後 顔貌

 初診時 右側   動的治療後 右側

初診時 正面   動的治療後 右側

唾液検査比較

初診時、初期治療後の再評価時、動的治療終了時の比較をおこないました。治療開始前は、う蝕・歯周病ともにリスクが高かったものの初期治療によりリスクは減少し、動的治療期間中も毎回メインテナンスをおこない、フッ素洗口をおこなったことでう蝕のトータルリスクは14→9、歯周病のトータルリスクは5→3に減少しました。

歯肉からの出血を示すBOPは13.7%→0.7%に減少し歯周組織の炎症はコントロールされている状態でした。歯の磨き残しを示すPCRは初診時34.3%→再評価時12.1%→動的治療終了時25%と初期治療時に減少した値が動的治療後に増加してしまいましたが再度初期治療やTBIをおこなうことで減少しています。

う蝕のトータルリスク比較

う蝕のトータルリスク比較

歯周病のトータルリスク比較

歯周病のトータルリスク比較

PCR、BOP、4mm以上の歯周ポケットの比較(%)

PCR、BOP、4mm以上の歯周ポケットの比較(%)

■ 考察

本症例は、上下顎前歯の唇側傾斜により口唇の突出感と口唇閉鎖時の緊張感が顕著な症例でした。成長期にある患者さんの場合、前歯を後退させることで顕著に口唇の突出感が改善されますが、本症例のように成長が終了した成人症例では改善度合いが小さくなることがしばしばあります。そこで、インプラントアンカーを利用して前歯を最大限に後退させることで口唇の突出感および緊張感を改善することができました。

また、Oさんはプロの通訳であり発音に対してシビアな職種でした。歯並びが良くなることはOさんの発音に良い効果があると予想していましたが、歯並びが良くなる途中の矯正治療が悪影響を及ぼさないか若干の不安がある状態での治療開始でした。しかしこのインタビューで、Oさんの努力による部分が大ではあるものの、矯正治療がお仕事に悪影響を与えず終了できてホッとしています。

一方、成人症例で予測が難しいのが歯周組織の変化です。初診より歯肉の退縮や歯周炎を認めていたことから前歯部の歯肉退縮によるブラックトライアングルはある程度予想していたものの、左下5番の歯肉退縮は初診時に顕著な症状も認めなかったため予想していませんでした。頬側以外の歯槽骨吸収は認めないため動揺などはなく機能的には問題ありませんが、今後もメインテナンスを継続し歯肉退縮が進行しないように注意深く管理していきます。


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