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インタビュー17/Nさん「顎変形症(下顎左側偏位)交叉咬合、両突歯列、叢生歯列」

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「全部の歯で噛めていることを実感できた」

Nさん「顎変形症(下顎左側偏位)交叉咬合、両突歯列、叢生歯列」

ひるま矯正歯科で治療を始めたきっかけを教えてください

もともと歯並びが悪い家系で、妹やいとこも小さい頃から矯正治療を受けていました。当時僕も治療をすすめられたのですが、「痛そうだし、まだ先でいい」と思い、治療しないでいました。でも社会人になってから自分でも気になるようになって…。親元から離れて自立していましたし、費用も何とかなるだろうと思い、治療を決意しました。

医院探しはインターネットで。会社の寮から立川が近いので、「立川 矯正歯科」で検索したら、トップに出てきたのがひるま矯正歯科でした。ホームページの写真で見る医院の雰囲気がとても良いし、患者さんのドキュメンタリーもわかりやすく紹介されていたので、電話をして資料を送っていただきました。その資料にも治療の様子がこまかく載っていて、イメージをつかむことができたので、ひるま矯正歯科で治療をすることに決めました。

初診の印象はどうでしたか

白が基調で清潔感のある医院で、ホームページを見て想像していた通りでした。晝間先生の説明もとてもていねいで、僕の話も真剣に聞いてくれ、誠実な印象を受けました。検査の結果、僕の場合、あごの骨のずれが大きいので、矯正治療がある程度進んだ段階で、外科手術をして下あごを上あごの歯並びに合わせて矯正する「外科矯正」も、治療の選択肢として検討してくださいと言われました。これまで矯正治療というと、矯正装置をつけることくらいしか知らなかったので、手術と聞いてびっくりしました。また、歯並びの悪さが原因で磨き残しが多く、むし歯も多かったので、矯正治療に入る前に、まずはむし歯の治療からスタート。すべてが予想外の展開でしたね(笑)。

矯正装置をつけて、いかがでしたか

予想していた通り、痛かったです。でも、小さいころ妹から痛いということは聞いていましたし、最初にいただいた資料からイメージしていたので、「こういうものなんだ」と、自分を納得させました。

抜歯は、上と下の左右4番と右上の7番の歯、合わせて5本。右上の7番の歯は、以前治療した金属の修復物が入っていて状態が良くないということで抜歯しました。その抜歯した場所に、奥にはえていた親知らずをひっぱってならべるということでした。矯正治療って、そんなこともできるんだとびっくりしました。

外科手術を決断した理由を教えてください

晝間先生が、外科手術を受ける場合と受けない場合のメリットとデメリットをくわしく説明してくれたのです。受ける場合は「お金もかかるし、手術なので体に負担もかかるけれど、まっすぐな歯並びになり後戻りも少ない」、受けない場合は「経済的な負担はないけれど、後になって元に戻ってしまうリスクがある」とのことでした。いろいろ悩みましたが、歯は一生ものですし、ここまで時間をかけて治療してきて後戻りするはいやなので、手術することを決意しました。

手術、入院はいかがでしたか

手術は晝間先生の紹介で、立川病院で受けました。入院は2週間の予定だったので、3週間の有給休暇をとって臨みました。当日は、最初に麻酔の注射をされ、目がさめたら手術は終わっていました。一番つらかったのは、手術の日の夜です。熱が出て体中がとにかく熱い。さらに、口全体に包帯が巻かれて開かない状態になっているのですが、寝ると口がひっぱられる感じがして、あごの関節に負担がかかるのです。本当につらかったですね。また、流動食のため、チューブを鼻から胃まで入れていたのですが、それがのどに当たって痛くて…。あご自体の痛みはあまりなかったのですが、頬がパンパンに腫れて、鈍痛もしばらく続きました。でも手術のあと鏡を見たら、今までずれていた上の歯と下の歯がきれいにそろっていて、とても嬉しかったですね。1週間くらいたつと、手術直後にあった痛みも除々に落ち着き、予定通り2週間で退院しました。退院後、また熱が出て2、3日は調子が悪かったのですが、後遺症もなく、無事職場に復帰することができました。

退院後は、どんな治療をおこないましたか

あごの骨をけずったあとの微調整のような感じで、手術前と同じように矯正器具を使って治療を続けました。食事の時、これまでは歯がういている感覚があったのですが、全部の歯でかめていることを実感できるようになりました。時間をかけて治療してきたかいがあったと思います。

ひるま矯正歯科で治療してよかったですか

本当に良かったです。歯並びがきれいになったのに加え、歯磨きの仕方の指導もていねいにしていただいたので、歯のケアについての意識が高まりました。現在、リテーナーで保定中なのですが、毎回磨き残しのチェックをしていただいています。「よく磨けています」と言われることが多いのですが、油断すると磨けていないこともあるので、これからもきちんとケアしていきたいと思います。

矯正治療をしている時は、矯正装置をつけた後の痛みがすごくつらくて、ついネガティブになってしまいがちですよね。でも、痛いということは、それだけ歯が良い方向に動いているということ。ポジティブ思考で治療と向き合っていくことをおすすめします。

初診時の診断:「顎変形症(下顎左側偏位)交叉咬合、両突歯列、叢生歯列」

今回は、骨格性下顎骨左側偏位により外科矯正治療をおこなったNさんの症例解説をおこないます。Nさんは初診時に外科矯正を希望されていた訳ではありませんが当院分析の結果、顔貌の対称性を得て長期的な安定性も考慮すると外科矯正を適応した方が良いと考え外科矯正をお勧めして治療をおこなった症例です。

■ 現症

【主訴】

叢生(歯のでこぼこ)によるかみ合わせの不安定感、歯の突出(唇側傾斜)による口唇突出感の改善。

※以下より画像をクリックすると大きい画像が見れます。

顔貌所見

顔貌

側貌

骨格的に上下顎骨の前後的なズレは顕著に認めませんでしたが、下顎骨は左側に偏位し口裂は左上がりになりオトガイも左側に偏位していました。側貌では口唇の突出感が強く特に下唇の突出感を強く認めました。オトガイ部軟組織は口唇閉鎖時の緊張感を強く認めました。

口腔内所見

上下顎歯列の前後的および水平的な位置関係にズレがあり、上顎歯列に対して下顎歯列がやや前方かつ左側に位置していました。上顎歯列正中に対して下顎歯列正中は約6ミリ左側に偏位し左側側切歯部から犬歯・小臼歯にかけて反対咬合を呈していました。大臼歯関係は右側がAngle class III、左側はAngle class Iと非対称な咬合関係でした。

一般歯科的所見は上左右8番は埋伏し、上右7番4番2番が失活歯で多数の修復歯を認めう蝕経験歯数(DMF)は15本でした。口腔衛生状態は不良で、歯の磨き残しを示すPCRは56.4%、歯周病の進行状況を示す歯肉からの出血(BOP)は5.4%、唾液検査によるう蝕のトータルリスクは14、歯周病のトータルリスクは9とう蝕・歯周病のリスクが高い状態でした。歯面にはプラークが付着し歯と歯肉の境には炎症による発赤を認めます。

 治療前 上顎

 治療前 右側 治療前 正面 治療前 左側

 治療前 下顎

▼は失活歯を示す
は失活歯を示す

特記事項

全身的な疾患や顎関節症などはありませんでした。

■ 治療方針

両突歯列・叢生歯列を伴う骨格性下顎骨左側偏位症例と診断し、Nさんには矯正単独の治療方針と外科矯正の治療方針をご説明しました。矯正単独の方針では下顎骨の偏位が改善できないこと、外科矯正では偏位を改善できるものの手術による痛みや入院が必要で手術後に麻痺が残る可能性もあることなど両方針のメリット・デメリットをご説明しました。当院としては長期的な安定性の観点から外科手術の方針をお勧めしました。抜歯部位は上顎右7番4番左4番8番、下顎左右4番、動的治療期間は30ヵ月を予定しました。失活歯は矯正治療後に抜歯となる可能性があることから本来であれば上顎右側の8番は抜歯対象ですが7番を抜歯し8番を牽引する方針としました。

唾液検査によりう蝕と歯周病のリスクが高いことがわかり、矯正治療開始前の初期治療として徹底したPMTC、歯石除去、ブラッシング指導によるバイオフィルムの破壊、フッ素の使用をおこないPCR30%以下、BOP0%の状態になってから矯正治療を開始することとしました。矯正治療開始後も毎回のワイヤー調整に合わせてPMTC、スケーリングによる歯石除去をおこない、う蝕と歯周病の原因菌によるバイオフィルムを除去して予防を徹底しておこなうこととしました。

■ 動的治療開始時口腔内写真

動的治療開始

動的治療開始時 上顎

動的治療開始時 右側動的治療開始時 正面動的治療開始時 左側

動的治療開始時 下顎

■ 術前矯正治療終了時(動的治療開始から36ヵ月後)

上下顎の小臼歯を抜歯したことで、上下顎前歯は後退し叢生は改善されました。上下顎骨それぞれに対して歯がまっすぐ並ぶことで上下顎骨のズレと同様に上下の歯列正中はずれているものの、上下顎における歯の高さは揃い咬合平面は平坦化しました。抜歯スペースの閉鎖、咬合平面の平坦化により外科手術が可能となったので手術をおこないました。外科手術は下顎骨を単独でおこない入院期間は約2週間でした。

術前矯正治療終了時(動的治療開始から36ヵ月後) 右側術前矯正治療終了時(動的治療開始から36ヵ月後) 正面術前矯正治療終了時(動的治療開始から36ヵ月後) 正面

■ 治療結果

動的治療期間

動的治療期間は約41ヵ月でした。調整回数は37回、平均的な来院間隔は1.1ヵ月でした。途中来院間隔が開いてしまったこと、偏位がずれたままの状態を維持しながら慎重に治療を進めたため診断時に設定した治療期間(30ヵ月)から大幅に遅れて治療を終えました。

顔貌所見

顔貌

側貌

小臼歯の抜歯により上下顎前歯が後退したことで上下口唇の突出感および口唇閉鎖時の緊張感が改善し、下顎骨は外科手術により右側に回転および後退したことで口裂の左上がりが改善しオトガイと顔貌の正中がほぼ一致しました。下顎骨の後退により下唇やオトガイ部が後退し、側貌全体ではE lineの内側に上下口唇が入るバランスの良い側貌を得ることができました。

口腔内所見

上下顎左右の臼歯関係はAngle class Iになり左右の臼歯関係は対称になりました。上下歯列の正中はほぼ一致し全体的に緊密な咬合を得ることができました。上右7番を抜歯して牽引してきた8番は上顎歯列に配列され対合する下顎右7番と咬合できるようになりました。

治療後 上顎

治療後 右側治療後 正面治療後 左側

治療後 下顎

X線写真所見

パノラマX線写真所見では、明らかな歯根吸収などを認めませんでした。失活歯は右上2番のみとなりました。左上8番は今後抜歯する予定です。下顎骨を後退させ固定する際に使用したチタンプレートが写っています。

▼は失活歯を示す
は失活歯を示す

セファロX線写真の重ね合わせにより上下顎前歯が後退し上下口唇の突出感が改善、外科手術による下顎骨の後退により側貌における硬組織と軟組織のバランスが改善したことを確認できました。

唾液検査比較

動的治療開始時、初期治療後の再評価時、動的治療終了時の比較をおこないました。治療開始前は、う蝕・歯周病ともにリスクが高かったものの初期治療によりリスクは減少し、動的治療期間中も毎回メインテナンスをおこない、フッ素洗口をおこなったことでう蝕のトータルリスクは14→9、歯周病のトータルリスクは7→1に減少しました。

う蝕のトータルリスク比較

う蝕のトータルリスク比較

歯周病のトータルリスク比較

歯周病のトータルリスク比較

PCR、BOP、4mm以上の歯周ポケットの比較(%)

PCR、BOP、4mm以上の歯周ポケットの比較(%)

■ 考察

本症例は、骨格的なズレが大きく外科矯正治療により下顎骨の偏位を改善しました。下顎骨単独の外科手術でしたが軟組織の非対称性を大きく改善することができました。上顎骨も外科手術により移動するかどうか、診断時、外科手術前の再評価時に、外科医、患者Nさんと検討しましたが負担が大きいと考え下顎骨のみの手術としました。非対称性の改善効果は予想より大きく結果は良好でした。右上7番を抜歯し8番の牽引も上手くいきましたが歯冠サイズが小さく歯根も短いので今後も注意深いメインテナンスが必要です。右上2番の失活歯は変色を認めましたので動的治療後に補綴処置をおこないました。

う蝕と歯周病のリスクは矯正治療開始前に比較して減少し、失活歯数も抜歯により減少したことで長期的に保存可能な歯列の状態へと変化しました。今後は、むし歯と歯周病予防のためのメインテナンスを継続することでNさんの寿命より歯の寿命を長くできるように管理していきたいと考えています。


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