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ドキュメンタリー矯正治療 / ステップ26

アイデアルアーチの曲げ方

では、矯正治療の理想的な歯列弓を生み出すアイデアルアーチの曲げ方について説明します。

アイデアルアーチでは、細かい調整をおこなうためにブラケットスロットサイズと同じ太さである0.018×0.025インチ(約0.45×約0.61ミリメートル)の角ワイヤーを用います。ただし、症例によってはブラケットスロットサイズより僅かに細い0.017×0.025インチの角ワイヤーを用いることもあります。

ワイヤーを通すためのブラケットスロット


ワイヤーを通すためのブラケットスロット

ブラケットスロットのサイズは0.025インチ×0.018インチ(約0.45×約0.61ミリメートル)


ブラケットスロットのサイズは0.025インチ×0.018インチ(約0.45×約0.61ミリメートル)で、このサイズにぴったり(フルサイズ)の断面を持つ角ワイヤーでアイデアルアーチを製作することで精密な仕上げをおこなう

アイデアルアーチではアーチの形を整えるだけでなく、歯列弓に対して直交する方向への調整をおこなうオフセット、歯根の頬舌的な傾斜をコントロールするトルク、歯軸の近遠心的なコントロールをするティップを入れます。

レベリングやキャナインリトラクションに用いるラウンドワイヤーは手だけでアーチを作ることができますが、角ワイヤーは太くて固いため手だけでアーチをつくることはできません(できる人もいるのですが私は手が痛くなるのでできません。普通の力の人では無理でしょう)。そこで基本的なアーチを作る際はアーチフォーマーと言う専用器械を使います。

まっすぐな状態の角ワイヤー

アーチフォーマー

アーチフォーまでアーチ型に曲げられた角ワイヤー

基本的なアーチ型の角ワイヤー

基本的なアーチに曲げられたワイヤーを適当な長さに切断し、口腔内で試適します。この際ベンドを入れる部位をマーキングします。

アーチワイヤーにマーキング

マーキングした部位にオフセット、ティップバック、トルクを入れていきます。これらのベンドは、実際に口腔内を見ながらそれぞれの歯の形態や傾斜に合わせて入れていきます。

プライヤーでアーチワイヤーに王セットを組み込んでいる所

オフセット(○)が組み込まれた状態

前歯部と臼歯部の上顎アイデアルアーチ側面観

安定した歯列形態は、歯1本1本が歯を支える歯槽骨の中になければなりません。そこで初診時の口腔内石膏模型を利用しながら各症例の歯槽骨の形態に合わせアイデアルアーチを微調整していきます。

ワイヤーはステンレススチールの材質ですので熱を加えると剛性が高まります。全体的なベンドが入り調整されたワイヤーに熱を加え剛性を高め、再度微調整をおこないます。

タイバックするためのフックと顎間ゴムを装着するためのフックを蝋着します。

上下のアイデアルアーチを同様の手順で作製し、最終的には上下のアイデアルアーチをコーディネートしていきます。

上顎、下顎のアイデアルアーチ

理想的な咬合状態では、上顎歯列が下顎歯列より前後径が長く幅も広いことや犬歯の位置関係とオフセットの量などを考慮して上下のアイデアルアーチを調和させていくのです。

スタンダードエッジワイズテクニックによるアイデアルアーチ
スタンダードエッジワイズテクニックによる
アイデアルアーチ

ストレートワイヤーテクニックによるアイデアルアーチ
ストレートワイヤーテクニックによる
アイデアルアーチ

今回説明したように、スタンダードエッジワイズテクニックではアイデアルアーチに様々なベンドを入れるため、左側に示すような形態となります。

しかし、ストレートワイヤーテクニックではブラケットに平均的なトルク、オフセット、ティップが組み込まれているためにベンドの入っていないストレートなアーチワイヤーが用いられます。

もし、どんな症例でも歯の形や歯根の傾きが平均値に近いのであれば、ストレートワイヤーテクニックによるアイデアルアーチでも理想的な矯正治療の仕上がりが得られるでしょう。

しかし矯正専門医院として長く患者さんを診てきた私たちは、患者さんによって歯のサイズや形態は大きく異なり、本来左右対称であるはずの歯が左右非対称であることも珍しくないことを良く知っています。そして、この違いを理解し、微調整を加えることがより高い矯正治療の仕上がりに繋がることを身にしみて感じているのです。

平均的な歯や顎の形態を持たない症例でも安定した矯正治療の仕上がりを得るためには、1人1人の患者さんのお口の中に合わせたブラケットポジションやワイヤーの形態が必要となるのです。

だから私たちは、1人1人の患者さんに合わせてアイデアルアーチを曲げるスタンダードエッジワイズテクニックにこだわるのです。

Dr.ヤスアキのほっと一息

今回説明したようなアイデアルアーチの曲げ方は、最も基本的なものであり医師によっても異なりますし症例によっても異なります。また、アイデアルアーチだけでなくレベリング、キャナインリトラクション、アンテリアリトラクションのステップでも、歯と歯槽骨の形態に合わせて上下のワイヤーを曲げ、上下のアーチワイヤーをコーディネートしながら治療を進めるのがスタンダードエッジワイズテクニックの基本的な考え方です。

しかし、アイデアルアーチを完璧に曲げられたからと言って、全ての患者さんに100点満点の理想的な仕上がりを提供できる訳ではありません。
今回の「矯正治療の理想的な仕上がり」は新潟大学の八巻先生が作製した3DCGによる図を使用させて頂きました。本来であれば私が治療した症例で理想的な治療の仕上がりをした症例を提示するべきだと思います。実は、私は100点満点で反省点のない矯正治療の仕上がりをしたことがないために3DCG による画像をお借りしたのです。

どうせ100点満点の仕上がりにならないのであれば、最初から理想的な仕上がりを目指さなくたって良いではないかと考える方もいると思います。

しかし、100点満点の理想的な仕上がりを目指さなかった場合、100点満点が可能な症例に巡り合った時、100点満点の結果を残せるでしょうか?
また、100点満点を目指すから、理想的な仕上がりができない症例でも90点や80点と言った高い合格点を出す治療ができるのではないでしょうか?
もし、100点満点を目指さなければ、元々90点を出すのが精いっぱいの症例が80点や70点になってしまうことはないのでしょうか?

私は、どんな症例でも治せる天才矯正歯科医になれるとは思いません。
しかし、いつも理想的な矯正歯科の仕上がりを求めてあきらめず、少しずつでも矯正治療の仕上がりの平均点を高め、合格点に達する症例を増やしていく矯正歯科医になりたいと思っています。
そのためにこだわり続けるのが、1人1人の患者さんに合わせた矯正治療であるスタンダードエッジワイズテクニックなのです。


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