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ドキュメンタリー矯正治療 / ステップ23

再評価をおこなう理由

今回のドキュメンタリー矯正治療では、治療の経過を振り返る再評価と再評価後におこなうポジションチェンジについて説明します。

これまで「ドキュメンタリー矯正治療」を通して解説してきたように矯正治療の流れは、レベリング⇒キャナインリトラクション⇒アンテリアリトラクション⇒アイデアルアーチと進みます。
ひるま矯正歯科では、アンテリアリトラクション終了時にX線写真や口腔内模型を採得し、治療の流れを確認「再評価」しています。

矯正治療は、長期に渡る治療です。
毎回の矯正治療時に、治療開始時の模型やX線写真、治療計画を確認して治療を進めていかなくてはなりません。このような細かい確認を繰り返しながら治療を進めなければ、最終的な治療結果が治療開始時に設定した治療のゴールから大きく外れたものとなってしまうからです。

しかし、毎回の矯正治療時に様々な確認をしていたとしても、肉眼では見ることのできない骨の中の歯(歯根)の位置関係(ルートパラレリングやトルク)などはX線写真や口腔内模型により確認しなくてはなりません。かといって毎回の矯正治療時にX線写真を撮影したとしても、矯正治療にともなう細かい変化が確認できないことに加え、撮影にともなう患者さんの負担も大きいために、毎回X線写真撮影をおこなうことはしません。

そこでひるま矯正歯科ではX線写真や口腔内模型を用いた再評価はアンテリアリトラクション終了時におこなう場合が多いのです。

なぜ、アンテリアリトラクション時に再評価をおこなうのでしょうか?

アンテリアリトラクション終了時は、矯正治療開始時から噛み合せの状態が大きく変化しています。また、アンテリアリトラクションの次のステップである最終的な仕上げ「アイデアルアーチ」のステップでは、細かい調整をおこないしっかりとした噛み合せを仕上げていきます。細かい調整をおこなうためには、通常の矯正治療時に見落としている点を再評価する必要があるのです。そのために、アンテリアリトラクション終了時は再評価をするために良いタイミングなのです。

治療開始時
再評価
治療開始時 写真1
再評価時 写真1
治療開始時 写真2
再評価時 写真2
治療開始時 写真3
再評価時 写真3
治療開始時 写真4
再評価時 写真4
治療開始時 写真5
再評価時 写真5

何を再評価するのでしょうか?

ひるま矯正歯科では、主に以下の点について再評価しています。

1.開始時の治療計画と大きなズレがないか
2.スペースが閉じた状態で、噛み合せが安定しているか?
3.顎骨の中の歯根の位置関係(ルートパラレリング、トルク)に問題はないか?

1. 治療の計画と大きなズレがないか

矯正治療の計画は、治療開始前の資料を元にできるだけ綿密な計画を練る必要があります。しかし、歯の動きは全ての症例で同じ動きをすることはなく、時として予想外の動きをします。予想外の動きが治療上より良い歯の動き方であっても悪い動き方であっても、治療計画に微調整や変更を加えより良い噛み合せを創る策を練らなければなりません。

ここで、治療計画を振り返ってみましょう。

以下はドキュメンタリー矯正治療開始時の治療計画です。

治療計画1
下顎第3大臼歯(親知らず)を抜歯します。
治療計画2
歯石を除去し、口腔内衛生状態をより良い環境にします。
治療計画3
スタンダードエッジワイズ法により上下顎全ての歯に装置を装着します。
治療計画4
上顎大臼歯の前方への傾斜が改善されると、上顎歯列は現在より後方に変化すると考えられます。すると下顎歯列は上顎歯列に対し相対的に前方へ位置することになるので、より下顎歯列を後方に移動するような顎間ゴムを使うことが予想されます。
治療計画5
歯の移動により空隙を側切歯、犬歯間に集めた後上下顎前歯を後退させながら空隙を閉鎖します。
治療計画6
側切歯は正常な状態に比べ小さいので、レジン(歯科用プラスチック)もしくはセラミックで形態修正します。

治療計画1~5については、予想外の反応や大きな変更はありませんでした。

しかし、治療計画6において変更があります。

口腔内写真をみて頂くとわかりますが、正常な大きさよりも小さい側切歯の形態を修正せずにスペースを閉鎖しました。これは、治療を進める過程で、ドキュメンタリー矯正治療患者である当院スタッフと相談した結果、「側切歯の形態異常はあまり気にならない。それよりもできるだけ歯を削りたくない」といった希望が生まれました。そこで側切歯の形態修正をおこなわずにスペースを閉鎖することとしました。しかし、側切歯の形態修正をおこなわずに動的治療(歯を動かす治療)を終了すると、保定(動かした歯を安定させる)期間中にスペースがでてきてしまう可能性があるため、その際にはレジンやセラミックで形態修正することとしました。

正常な大きさよりも小さい側切歯を形態修正せずにスペースを閉鎖した状態

正常な大きさよりも小さい側切歯を形態修正せずにスペースを閉鎖した状態

2.スペースが閉じた状態で、噛み合せが安定しているか?

アンテリアリトラクションをおこなうことで前歯の歯軸は、トルクコントロールをしていても舌側に傾斜しやすくなります。また、アンテリアリトラクションの際のアンカーである大臼歯には、アンカーロスさせる力(大臼歯を近心に移動させる力)が働きます。アンテリアリトラクションで必要以上の前歯歯軸の舌側傾斜や大臼歯近心傾斜をさせてしまうと、アンテリアリトラクション終了時に上下顎の咬合平面がゆがんでしまい噛み合せが不安定になることがあります。また、アンカーロスにより上下の大臼歯関係がズレてしまったり、左右非対称になってしまうこともあります。

アンカーロスにより近心傾斜し、咬合平面から飛び出した上顎第1大臼歯

トルクコントロールの不足により舌側傾斜し、咬合平面から飛び出した上顎中切歯

アンカーロスによる近心傾斜とトルクコントロールの不足により舌側傾斜

咬合平面:上下顎それぞれの歯の咬合面(噛む面)が連続して作る平面

ドキュメンタリー矯正治療では、抜歯して治療をおこなう症例ではなかったため前歯を後退させる量があまり大きくありません。そのため、前歯の歯軸をあまり大きく変化させない症例です。しかし、症例をX線写真により細かく観察すると下顎前歯の歯軸が舌側(内側)に傾斜し過ぎています。
*下記頭部X線規格写真の重ね合わせを参照

その結果、下顎前歯が上顎前歯に対して後方に位置する出っ歯の状態となっています。また、下顎前歯が舌側に傾斜したことから歯の根の先端部(歯根尖:しこんせん)が下顎骨の中央より唇側に位置しています。これらの問題点は、今後の治療ステップ(アイデアルアーチ)で改善し、仕上げていかなくてはなりません。

頭部X線規格写真の重ね合わせ
(黒いライン:初診時 青いライン:再評価時)

頭部X線規格写真の重ね合わせ

頭部X線規格写真の重ね合わせ

下顎前歯が舌側に傾斜して移動したために歯冠は舌側に歯根尖は頬側に位置していることが分かる

また、アンテリアリトラクションにより歯列のスペースが閉鎖されると咬合平面の連続性が明瞭になってきます。この結果ブラケットポジションが不良である場合、歯が捻転していたり、歯が咬合平面から飛び出て部分的に強く咬んでしまう箇所が明らかになります。症例によっては、捻転や早期接触を起こしている歯のブラケットポジションも変更し改善していきます。

3.顎骨の中の歯根の位置関係(ルートパラレリング、トルク)に問題はないか?

矯正治療後の歯並びや噛み合せの安定性を考えた場合、顎骨内の隣合う歯根と歯根が接近し過ぎないことが大切です。顎骨内で歯根が接近している場合、歯根が吸収してしまったり、矯正治療後に後戻りしてスペースができてしまうことがあります。このため、歯根はできるだけ平行に近く配列しながら噛み合せを仕上げることが大切になります。このように歯根の接近を防ぎ平行性を保つことをルートパラレリングと呼びます。ルートパラレリングをきちんとおこなうためにも、ブラケットのポジショニング、アンカレッジコントロール、トルクコントロールをきちんとおこなうことが大切です。

理想的なルートパラレリング
理想的なルートパラレリング

つまり、歯軸に対するブラケットのポジショニングがきちんとしていなければ歯根は傾斜してしまいます。また、アンカレッジコントロールやトルクコントロールが不十分で歯軸が傾斜してしまった場合もルートパラレリングはできなくなります。

ドキュメンタリー矯正治療では、上顎の第1大臼歯と第2小臼歯の歯冠部が近接し歯根部が離れています。これは、アンカーロスによりアンカレッジコントロールが崩れたわけではなく、歯軸に対するブラケットの位置(ブラケットポジション)が悪かったためと考えました。

▼ドキュメンタリー矯正治療 : 再評価時のパノラマX線写真

理想的なルートパラレリングに対して
歯が傾斜した状態を青く示す

パノラマX線写真の拡大


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