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インタビュー/歯周病担当 福井秀和

スウェーデンの医療哲学を通し 人を「みる」衛生士を育てたい

歯周病という病気について教えてください。

歯周病とは、バイオフィルムという歯に着いた細菌の塊が歯周組織の破壊を引き起こす疾患です。歯周病には、歯肉炎と歯周炎があります。簡単に言うと、バイオフィルムが歯と歯茎の間に蓄積して炎症を起こし、それが歯茎だけにとどまっていると歯肉炎、歯を支える骨、歯槽骨まで炎症が広がってくると歯周炎となります。これらを合わせて歯周病と言います。歯周炎になってしまうと、骨が溶け、歯を支えることができなくてグラグラになり、やがて抜けてしまいます。それが歯周病の恐ろしいところですね。軽度の歯肉炎の段階で発見できれば進行をストップさせて健康な状態に戻せる可能性があります。しかし、歯周炎まで進んでしまうと、炎症のない状態には戻せますが、溶けた骨は再生しないので元の健康な状態には戻らないのです。

また、高齢者の病気というイメージがありますが、細菌はいつどこででも繁殖します。基本的には歯が生え始めたら歯周病のリスクはあると考えてください。ただ、年齢を重ねている方は、細菌が蓄積している期間が長い分、よりリスクは高いと言えますね。

どのような治療をしますか。

歯と歯茎の間を歯周ポケットと言いますが、そこにバイオフィルムが蓄積されていないか、さらに歯槽骨の状態について検査をします。検査は先端に目盛りのついている器具を使い、歯周ポケットの深さを調べます。歯周ポケットの深さは、通常は2~3ミリですが、炎症が増してくると歯茎が腫れてポケットは深くなります。炎症しているかは出血の有無からもわかります。

歯周ポケットのなかにバイオフィルムの蓄積が確認された場合は、徹底的に除去します。軽度の歯肉炎の段階であれば、歯石やバイオフィルムを除去したうえで、正しい歯みがきを続けることで炎症が治る可能性があります。どうしても歯周ポケット内のバイオフィルムの除去が難しいときは、歯周外科で歯茎を開く手術をして、バイオフィルムを除去することもあります。また、一度失った骨は再生しないと言いましたが、患者さんの状態によっては再生療法で骨を回復させることも可能です。ただし、これは最先端の治療で適応になるにはさまざまな条件をクリアする必要があります。

予防はできますか。

正しい歯みがきを継続するということですね。それから、定期的に歯科医院に通ってメインテナンスを受けることも大事です。メインテナンスは、お口の中をきれいにしてもらうだけではなく、日頃やっているお家でのケアがきちんとできているかを確認する場ととらえてほしいと思います。きちんと歯みがきができていれば歯周病は予防できます。自分の体を守るために自分自身でケアしてほしいですね。

歯科医になり歯周病を専門に選んだのはなぜですか。

医療系に従事している家族が多く、影響を受けて歯科医師になりました。歯周病は国民の8割が罹っていると言われる疾患です。臨床の場に出て患者さんの多さを目の当たりにし、しっかりと勉強しないといけないと必要性を実感して、より専門性を高めようと思ったのです。

スウェーデン王立イエテボリ大学大学院の歯周病専門医過程を卒業されていますが、どのようなことを学びましたか。

スウェーデンは歯周病治療や予防治療の先進国で、イエテボリ大学の歯周病科は世界で優れた教室です。そこでの教えは、治療計画を立てるにも実際に施術をするときにも、常に理論的な裏づけが必要であること。自分の経験に基づいて治療をするのではなく、根拠となる文献に基づいた判断、治療をすることの大切さを学びました。決して患者さんにとって実験的になってはいけないのです。「何に基づいて」「何のために」を大切にしたスウェーデンの医療哲学を大事にしたいと考えています。

それと同時に、患者さんの考えや価値観も大切にしなければならない。例えば治療の到達度について、患者さんはそこまでは望んでいないということもあります。正しいからやりましょうというのは、こちらの価値観の押しつけです。原理原則を知ったうえで、患者さんの考えを聞き、そのなかで必要な治療を一緒に考えていかなければならないと思っています。

OPひるま歯科 矯正歯科以外の勤務や活動について教えてください。

月の多くを長野県下諏訪郡のさつき歯科で勤務しています。さつき歯科の小口道生院長と晝間院長が懇意にされていて、晝間先生が歯を守りたいと本気で考えていることに共感したということもあり、OPひるま歯科 矯正歯科で月に1回勤務することになりました。

他に、歯科衛生士を対象に全国で研修を行っています。歯周治療においては、衛生士の役割は非常に大きなものです。研修では、ただ歯石を取る指導だけではなく、生物学的な背景から病気の状態をみること、検査を理解することを大切にすることなどを教えています。見る、観る、視る、看る、診るなどたくさんの「みる」がありますがどれも大事な「みる」です。たくさんの「みる」を患者さんの状態、治療の進捗に応じて提供できる、ヒトではなく人を「みる」衛生士を育みたいと思っています。

スウェーデンの医療哲学を通して、よりたくさんの患者さんを救える衛生士、歯科医師が増えるよう今後も尽力していきたいと思います。