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予防歯科 啓発活動[ルミナ保育園講話レポート]

ルミナ保育園講話レポート 2020.2.15
「フフフで育てる強い歯」
OPひるま歯科 矯正歯科 院長 晝間康明

晝間康明院長先生が園医を務める立川市のルミナ保育園で、フッ素洗口を開始するにあたり、保護者の皆さんに向けて講話を行いましたので紹介します。

むし歯の原因は?

「歯」と「細菌」、「糖(ショ糖)」、これらが揃うことで脱灰(=歯が溶ける)が起こり、むし歯になります。それなら、むし歯を防ぐために細菌をゼロにし、糖分をまったく取らなくするといい、ということになりますが、それは不可能です。では、むし歯になるのは防ぎようがないのかと言えば、それは違います。歯は脱灰と再石灰化を常に繰り返し、元の状態に戻しているので、通常であれば、むし歯は防ぐことができます。しかし、唾液の力や、糖の種類、フッ素使用の有無などにより脱灰と再石灰化のバランスがかわってきます。酸による脱灰が強くなったとき、歯がもろくなっていき、穴の空いたむし歯になるのです。

むし歯とはどういう病気?

歯に黒や茶色、白く濁った点ができたなと思ったときには、歯の内部でむし歯が進行している可能性があります。むし歯は入口は小さくても中が洞穴のようになってばい菌が増殖している病気です。学校の検診では歯が茶色になっていたり、黒くなっていたら「むし歯かも知れませんね、歯医者さんに行ってください」と言われます。つまり歯の表面を見ただけでは、むし歯の進行具合はわからないのです。

一般的な歯科で実際に行われるむし歯の治療

では歯医者さんに行って、どのような治療が行われるかというと、入口が小さく、どのようにむし歯が広がっているのか分からないため、探索的に歯を削っていくことになります。もちろん色などである程度の判断はできますが、削ったけれど、ここにはなかったということもあり得るということです。削っていくうちにバリ(不要な突起)ができれば、あとから欠けるのでそれも削ります。そうしてむし歯に侵されている箇所を発見して削り取り、詰め物を詰めて治療は終了します。白い詰め物であれば特に、むし歯は治り、まるで元の歯にもどったかのように感じられると思います。しかし実際には元にもどったのではなく、歯を元の形に修復したというだけなのです。

修復治療をした歯はどうなっていく?

歯というのは噛むときにすごく強い力がかかっています。さらに冷たいアイスクリームから熱いお茶までさまざまな温度にも耐えなければなりません。こうして年月を重ねると、詰め物で修復した歯は、接着剤が溶けていったり歯が欠けていったりして歯と詰め物の間に隙間が生じてきます。小さな隙間であってもばい菌の大きさは1〜10マイクロメートルで、ばい菌から見ると、すごく大きな隙間であり、十分に入っていくことができるのです。隙間から入ったばい菌は歯の中で増殖します。そのため詰め物を取ってみると、むし歯が広がっていて、またその部分を削らなくてはならなくなるのです。

このように、一度削ると、次にまた削らないといけない状況を生み出していきます。歯は削ると当然ですが小さく弱くなっていきます。そうすると歯に割れ目ができることもあります。最初は細い線のように見えるのですが、診察してみると中まで到達していることもあります。この細い割れ目にもばい菌は楽々と入っていき、そうなると激痛です。抗生物質を飲んでも内部までは効かないため日常生活ができなくなり、最後は歯を抜きましょうという診断になります。このように治療の繰り返しによって、突然抜歯になるというケースが非常に多いのです。

年代別の歯の状況を確認してみましょう

  • 乳幼児…歯に穴が空いている子どもはほとんどいません。ただ、見えていないだけで内部で進行していることはあるので注意は必要です。
  • 10代…詰め物が入っている人がちらほらいます。痛かったり沁みたり、歯科検診でむし歯が見つかったりして、修復の治療が始まっていきます。15歳あたりから歯周病に罹る人も出てきます。
  • 30代…小さな詰め物から大きな詰め物やクラウンに変わっていきます。これは小さな詰め物の隙間からまたむし歯が広がって再治療になったということです。
  • 40〜50代…抜歯になるケースが増えてくる年代です。特に一番奥の歯は治療が難しいので、むし歯になると抜くしかなくなってしまいます。抜歯をすると部分入れ歯やインプラントになります。
  • 70代…前歯や奥歯も左右とも入れ歯になってきます。入れ歯が増えてくるとだんだん噛むのが面倒になってきて身体的な機能も低下していきます。
  • 80代…総入れ歯というのが現状です。話すのも食べるのも大変で、全身の体力が低下します。痴呆の確率も高くなることがわかっています。

歯を失わないために、今すべきこと

今、保育園に通っているお子さんたちは、だいたい6歳ごろ永久歯が生え始めます。今生えている乳歯と、生えてくる永久歯を守っていかないといけません。まずはむし歯にしないこと。そして、たとえむし歯になったとしても削って詰める、修復の治療はできるだけしないことが大切です。先述のとおり、一度削るとまた削らないといけなくなり、やがて歯を失うことになります。それを避けるためには、むし歯になった歯、なりそうな歯があれば、まずは原因を探し、それらを取り除いてむし歯の進行をストップさせることです。しかし、それでもむし歯が進行して、歯に穴が空いてしまったら削らないといけません。そうした場合にも最小限の修復治療ですむようにしていかないといけないのです。

子どもの歯を守るホームケアとプロフェッショナルケア

行政とお家と歯科医院で連携したケアができれば、子どもたちの歯は守っていけると考えています。行政は、むし歯予防に対する情報提供をしっかりとし、システムをつくること。お家では、むし歯になりにくい食習慣を確立して、正しい歯みがきを行うこと。歯科医院は歯みがきの方法や器具の使い方を指導し、定期的に確認するとともに、プロフェッショナルケアを行うこと。これらをしっかりやっていきたいと思います。

フフフのフ、フッ素が大切!

子どもの歯を守るホームケアとして非常に重要な「フフフ」を紹介します。小さい子どもが自分で歯をみがいたとしてもむし歯の予防にはなりません。歯ブラシが届きにくいところにばい菌がずっと住み続けることになります。そこで一つ目の「フ」、「フロス」を追加してください。歯と歯の間にばい菌が増殖しやすいので、そこが掃除できるとばい菌の除去率はぐっと高まります。

さらに、二つ目の「フ」、「フッ素」が重要です。フッ素入りの歯みがき粉を使うことで、フッ素が歯の表面にしみこんで、歯を強くします。フッ素を使うのが心配という方もいると思いますが、現在日本で売られている歯みがき粉に入っているフッ素の濃度は極めて低いので安心して使っていただくことができます。

フッ化物洗口がむし歯予防に有効!

4歳、5歳児クラスで昼食後にフッ化物洗口を始めたいと思います。やり方はとても簡単で、フッ素入りの水でぶくぶくうがいをして口の中にフッ素を行き渡らせて吐き出すだけです。実施に際しては保護者の方の同意のもと、先生方にはフッ素の管理と洗口液を吐き出したことの確認をお願いしています。むし歯は20歳までがリスクが高くなります。この時期にしっかり予防することが一生歯を守ることにつながります。保護者の皆さんもご自身とお子さんのお口の健康を考えるきっかけにしていただきたいと思います。