| 抜歯非抜歯の境界は明瞭ではなく、そこにはグレーゾーンが存在するわけですが、その狭間にあるケースを矯正医はボーダーライン・ケースと呼びます。よこさんの場合はボーダーライン・ケースなのかもしれませんが、そもそもボーダー(境界)ゾーンそのものが、矯正医自身の持つフィロソフィー(治療哲学、大きな意味の治療目標)によって広くなったり狭くなったりしますので、絶対的な抜歯基準というものはないといえます。 結局は、レントゲンや口の型など診断用の資料をとって分析したうえでなければ、どちらの先生も確定的なことがいえず、今は、よこさんの意向を伺うような視点で話を向けているように感じます。それが、よこさんを逆に不安にさせているようですが、これはある程度仕方がないことのように思います。 私の近々の例でいえば、相談時に非抜歯でいけそうだと見て資料をとったところ、分析の結果は抜歯ケースとなり、非抜歯を希望していた患者さんが矯正を断念したのが2例出てしまいました。相談時に、資料分析の結果によっては話が変わり得ることを伝えてあったとはいえ、患者さんには申し訳ないことをしましたが、治療方針を迎合して非抜歯にすることはしませんでした。そのお二人の患者さんは、恐らく非抜歯を唱道する矯正歯科を見つけて治療を始めているかと思いますが、好ましくない治療結果が想定される治療方針をとることは、やはりできません。それが矯正医としての矜持でありギャランティー(広義の責任)であると、私は信ずるからです。 <私にとって最適な矯正方法に導いてくれることを期待したのですが> よこさんは、先のどちらの矯正医にせよ、また別の矯正医にせよ、あるところで誠意を感じ納得したら、正式に資料をとって治療方針を聞くべきところにあるのではないでしょうか。矯正医は、そこではじめて最適な方針を提示できるからです。
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