| <ブリッジをすると矯正はできないのでしょうか?> ブリッジという義歯は、今有る状態で両側の歯を橋脚として橋を架ける(ブリッジ)わけですから、一本一本の歯を3次元的にコントロールする矯正治療では、ブリッジを壊して元の状態に戻さなければ、矯正を開始できません。しかも、橋脚にした両側の歯は、ブリッジのために削ってしまうわけですから、真の意味で元の状態に戻すことはできません。このデメリットが大きいので、ブリッジを入れる前に矯正医に相談することが大事、というわけです。 歯の状態からそれが保存可能か不可能かの判断は、一般歯科医の専門分野ですので、要抜歯と診断された歯を抜くことは良しとしても、そこにブリッジを入れてしまうと矯正には困る、という意味ですが、抜歯したスペースを矯正でどう利用するかは、詳しい資料の分析が必要です。抜歯を待てる状態であれば、今すぐ抜歯はせず矯正医の指示を待ってから行なうのが順当です。
矯正歯科医の見立てで<あまり積極的に矯正を勧められませんでした>とか、<外科手術を勧められました>ということは、ここに書かれている以上に矯正治療上のむずかしい何かがある、ということでしょうか。それにしても二人の矯正医の対応に納得のいかないのは、虫歯や歯周組織(歯ぐき)の状態の悪さに気後れしたための発言と感じるからでしょうか。なお、過剰咬合という咬合はないので、過蓋咬合のことかと思いますが、それで外科矯正という見立てはあるのかなという疑問はあります。 審美歯科という診療科があるので無碍(むげ)に批判はできませんが、<矯正歯科か審美歯科か>という選択のご質問は以前から結構あり、何度か回答して来ました。その一つを少し書き換えて下に引用しますので、参考にしてください。(以下、過去ログから引用) 以前、40代の女性からの投稿にこんな文言がありました。“先日審美歯科に短期間で済むクイック矯正の相談に行きました。そちらの先生は「審美歯科はあくまでも歯の見栄えを良くする為のものであるので、一度矯正専門の先生に相談してみてはいかがでしょうか」と言って下さりましたので、矯正専門のそちらの先生にご相談させていただきます。”この「見映えを良くする為のもの」というのは、まさに正鵠を射た言い方といえます。 <歯並びはガタガタの叢生というやつで、でっかい八重歯>という状態は不正咬合そのものです。それを研究する学問が歯科矯正学であり、それを治す科として矯正歯科があるわけですから、なおさんの治療の第一義は矯正歯科にあります。デメリットを顧みず、単純に「早くできるし、健康な歯の抜歯もしなくていい」という理由だけで、本来、矯正でしか改善できない不正咬合を義歯(審美歯科治療)で直した(あえて治したとは書きません)ために、納得できない結果に泣いた人をこれまで何人も見ています。 下記の記事は、あるサイトに立った審美歯科についてのスレッドに、一般歯科医がコメントしたものですが、参考のために引用します。 A歯科医 特に審美系(美容整形とか審美歯科とか)では訴訟になることが多いしね。なんせ基本的に保険が効かないから、患者さんは高額な治療費を払うことになるし、審美的な問題はかなり主観が入るから、医者的にはOKでも患者的な納得が得られなければだめだし。 B歯科医 審美歯科ちゅうのは、なかなか大変やと思います。まず、患者の要求が高くて、クレームつきやすい。それに、歯へのダメージが大きいです。かぶせた歯が一生持つことはまずありません。数年経つと歯肉が退縮し、かぶせた部分の境目が醜く露出してきて、やり直すことも多いです。歯周病が進行しやすく、歯の寿命がずいぶん短くなります。 C歯科医 美容歯科、審美歯科だけはヤメナサイ!!!悪くない歯牙を患者の希望どうり削り倒して、前歯の見た目だけを良くするだけだよ。医師としての倫理もプライドも無く、金の亡者になるだけだよ。咬み合せも顎関節のプロブレムも、ぺリオの将来も全く無視しなけりゃ出来ないよ!医師としての「魂」無ければ簡単だろうけどネ。
以上ですが、良心的な歯科医であれば、不正咬合を義歯で(審美歯科的に)処置することなど本来は出来ないものです。審美歯科で治療するのはドミノ倒しを続けるのと同じです。なおさんにはもう一度、信頼できる矯正医探しから始めてみることをお勧めします。
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