| 2007/06/11(Mon) 18:11:13 編集(投稿者)
指しゃぶりのうちもっとも多いのが母指吸引癖で、指しゃぶりの50%はこの形だそうですが、その吸引形態から、母指吸引癖は上顎前歯の前方(唇側)あるいは上方への移動と下顎前歯の舌側への移動をもたらし、影響が顎にまで及ぶと顕著な形(典型)として開咬をともなった上顎前突になります。 研究者によって数値や意見は若干異なりますが、指しゃぶりによって生じた開咬は、骨格型(顎)に問題がなく歯列の変形が軽微で、しかも4〜5歳までに指しゃぶりをやめれば自然治癒する、といわれています。小児歯科医だった神山によれば、指しゃぶり中止2年ほどで開咬が消失した例が多いと報告していますが、一方、自然治癒が期待できるのは、歯槽性(顎ではなく歯の部分)の変化と上顎前歯の唇側傾斜に限定される、という報告もあります。 これに対し、5歳までに指しゃぶりを中止できなかった小児の60%強で開咬の自然治癒が認められず、指しゃぶりは乳児期に中止するのが賢明であるとしています。結局、歯の位置は歯列(放物線状の歯のならび)を囲む筋力のバランスによって決定されるため、変形が大きかったり顎骨にまで影響が及ぶ場合は、単に指しゃぶりの中止だけでは自然治癒は望めない、といえます。
指しゃぶりは以下のような悪循環に陥りやすく、このサイクルに嵌まると改善は専門医の手に委ねる必要が出てきます。 1)歯列への影響 ・上顎前歯の唇側傾斜 ・下顎前歯の舌側傾斜 ・上顎の歯列狭窄(V字歯列) 2)口元の変化 ・上唇の翻転 ・口唇閉鎖不全 3)悪習癖の出現(上下前歯間の空隙に舌が出てくる) ・舌突出癖、異常嚥下癖、口呼吸 4)発音への影響、顎発育への影響 ・たとえばサ行(sa)の発音がtha,thi,thuのようになる。 ・下顎の前方発育を妨害し、後下方へ回転させる。結果として出っ歯を増長させる。 5)開咬、上顎前突の本格的不正咬合に発展、側貌も変化 ・成長発育にともなって骨格性の不正咬合に移行し、特有の顔貌を呈する。
以上、日本歯科出版「マイオファンクショナルセラピーの臨床 舌癖と指しゃぶりの指導」大野粛英ほか著より要約、引用させて頂きました。お子様の場合に自然治癒があるのか、矯正治療が必要になるのかは正直わかりません。要点は、上記サイクルの3)悪習癖の出現にあると考えています。舌癖がなければ自然治癒も期待できるかと思いますが、それをあらかじめ防止する手段は残念ながらありません。
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