| 近所の歯科医のいったという<手術で下顎の骨をずらしたため>というのは、どのような根拠があっての診断なのでしょうか。その歯科医は、これまで外科矯正をした人の下顎前歯が、まゆさんのような症状を呈するのを、何例か経験しているのでしょうか。 当院では、これまで外科矯正で手術した症例(すべてSSRO法)を数多く持っており、その内の80%ぐらいはまゆさんと同じ下顎前突症例ですが、手術が原因でその後まゆさんのような症状を現出したケースは、記憶にありません。調べるべき文献がいま手元にはないのですが、文献的にも「外科矯正の手術が下顎前歯部の歯槽部に悪影響を与える」たぐいの記述はないように思います。 一般的に、顎変形症(顎外科の適応症)のような強度の下顎前突者の下顎前歯部は、元々唇舌的な骨の厚みが薄いケースが多く、そのために無理な歯牙移動による矯正は禁忌とされており、その部に為害性(障害)が比較的少ない外科矯正が良い、とされています。手術方法や術前、術後の矯正のあり方、顎間固定の方法や強さなども影響を与える要因ではありますが、術後(矯正終了後?)3年過ぎた辺りから出てきたという症状を、以前の外科矯正に原因を求めるのは、いささか牽強付会(けんきょうふかい)の思いが拭えません。 ともあれ、今のまゆさんの下顎前歯部は、このまま放置しておいて良い状態ではありませんので、外科矯正<犯人説>にこだわっているより、歯周病科の専門医の診断と処置を仰ぐことをお勧めします。できれば、いちど歯科大学の歯周病科に相談されるのが、一番望ましい選択です。それもなるべく早いうちに。
|