| むずかしいご質問で、以下、詳細な資料のないままの私的コメントですので、参考程度に留めてお読みください。 歯根の短い歯を短根歯といいますが、顔や手足と同様、歯根の長さも人それぞれで、どこまでの長さをもって正常外(異常)とするか、矯正を不適用とするかは判断のむずかしいところです。inaさんの短小根が全歯に渡るのか、特定の歯だけかで見解が異なるのですが、全歯が短根歯だとして、<歯根の長さが1.5倍>程度でしたら、当院では矯正治療を勧める可能性は大です。それは、端的にいえば、不正咬合のままでいることの害を取り除いておくべき、という将来的な見地からです。 また、現にその程度の短根歯の矯正治療例は少なからずありますし、矯正治療(歯牙移動)イコール歯根吸収ではありませんから、そのことによって、将来、歯牙脱落の可能性を大きくするとは考えていません。むしろ、上に述べたように、不正咬合のままでいることによる歯周病や虫歯の誘因の方が、歯牙喪失の危険性を増大させると思っています。 なお、短根歯であることをもって非抜歯(歯を抜かない)矯正が良い、という言い方をする矯正医がいますが、これは要注意です。歯牙移動による歯根吸収の発生は、抜歯非抜歯に関係なく、技術的あるいは組織的、あるいは遺伝的不可抗力の問題であって、逆に、本来<矯正治療をするなら抜歯が必要>という症例に対し、非抜歯で矯正をすると、歯を取り巻く歯肉や歯槽骨に無理な緊張を強い、これが歯肉の退縮(つまりは歯を取り巻く骨の退縮、吸収)を招き、結果的に歯根を露出させることになります。歯根が短くなるのではなく、歯根を支える支持組織が下がることで歯牙脱落の危険を招来するからで、これは歯周病の病態と同じです。 短根歯のヒトは、矯正治療をするしないにかかわらず、生涯に渡って人一倍歯周病に留意することが肝要です。
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