| 2007/09/08(Sat) 17:27:12 編集(投稿者)
歯科矯正学の基本の一つは人類学(人種計測学)ですから、40〜50年前の矯正学教室では歯や顎の大きさあるいは生体計測、さらにはセファロ(頭部X線規格写真)を用いたあらゆる角度からの縦断的、横断的計測、研究が盛んに行われたものです。 データは古いものですが、たとえば歯の大きさ(専門的には歯冠近遠心的幅径)には確かに性差があって、女性の方が僅かに小さいとなっていますが、個体差、人種差、個体内変動も大きく、さらに遺伝的要因の影響がもっとも大きかったと報告されており、具体的に性差が臨床上考慮すべき要因となることはありませんでした。 セファロに関しても同様で、性差よりも人種差、個体差が大きく、実際、口腔模型を見て患者が男性か女性かはまったく分かりませんし、(セファロもそのような見方をしたことがありませんが、)おそらくセファロから性別を判断するのはまず無理だと思います。 矯正治療とは<調和の獲得>という言い方ができます。矯正臨床において顎と歯、上下の顎、硬組織と軟組織などの調和をとることに男女の別はありません。矯正治療上、性差を考慮するのは10代までの成長期にある患者の発育の様態を知る場合で、治療上では、外科手術の場合のオトガイへの対処が男女で若干考慮する度合いが違う程度です。 もともと矯正治療における治療目標は、数値化されたものではなく造形的なものですから、男女間の僅かな数値の差はあまり意味を持ちません。メロリンさんの質問の主旨は分かりますが、矯正治療においてはジェンダーフリーが現実で、それで問題ないと考えています。
多分、以上の回答ではメロリンさんは納得が行かないかと思いますが、その理由は<正常という決まった数値があって、矯正治療はその数値に持っていくこと>という陥りやすい思い違いにあるかと思います。数値は目安ではありますが、絶対的なものではありません。調和がとれていることが大事ですので、結果的に数値は逆に悪くなることもあり得ます。それが個々に適した仕上がりであって、数値ではとらえ切れない生体の奥深さでもあり、矯正治療のむずかしさであるともいえるのです。
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