| まず、真っすぐ前を向いて、下顎の力を抜き下顎の重さを支えるだけのリラックスした状態にしてみてください。このとき、翔さんの上下の歯は離れている(咬んでいない)はずで、上下口唇も開いているはずです。この状態を下顎安静位といいますが、このとき翔さんのオトガイに梅干しはできていますか。 通常、下顎が安静位にあるとき、下唇からオトガイに至る筋肉(軟組織)は、その下部組織である骨をほぼ均一に覆う、つまり骨と軟組織の厚さはほぼ平行の状態にあります。ですから梅干し状の緊張はできません。 梅干しができるのは、口唇を閉じるときに出っ歯のために上下口唇が届かず、無理に下唇を引っぱり上げるためにオトガイが緊張するためで、当然このとき骨を覆う軟組織の厚さは不均一になっています。具体的には、オトガイ部で軟組織の厚さが著しく薄くなり、下唇に至るにつれて厚くなりますので、横顔はオトガイがのっぺりし口元が突出した特有の形になります。 軟組織の調和のとれている状態とは、口唇を閉じてもどこにも異常な緊張がなく、ほとんど安静位の状態と同じ形態を保っていることです。調和のとれたこの状態が軟組織の美であり、矯正治療後の審美性の回復の大きな目安(目標)になっています。そのためには、上下口唇が緊張なく届くように口元を引っ込める必要がありますので、まず抜歯が必要な矯正になります。 翔さんが、下顎安静位にしてもオトガイの梅干しが取れないとすると、かなり頑固に癖がついているので、ほぐすためにマッサージが必要でしょう。安静位で梅干しができないとすれば、その状態まで口元を下げることを認識した矯正医であれば、翔さんの悩みを解決させることができるでしょう。 翔さんのオトガイの梅干しは、<歯を抜かない矯正>を売りにしている所では治らないことは改めて説明するまでもないと思います。
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