| <これはどういうことなのでしょうか?> ご自分で鏡を見ながら上唇をめくってみると、中央の左右前歯の間にスジのような腱(線維)が見えるはずです。これを上唇小帯(じょうしんしょうたい)といい、これが太過ぎたり裏側まで伸びたりしている状態を上唇小帯付着部異常といい、それが原因で隙間ができることがあります。 特にこの部分にできた隙間を正中離開といいいますが、ほとんどは永久歯への交換や顎の骨の発育にともなって、小帯の位置は次第に上に移動し、前歯の離開も次第に閉鎖していきますので、乳歯列の時はあえて手術をせず経過観察することが多いものです。ただ、永久歯に生え替わっても小帯の付着位置が上にあがらず、明らかにそれが原因で正中離開が改善されない場合は、小帯の切除手術をすることがあります。 つまり、上唇小帯付着部異常による正中離開は小児の時期から見られるもので、NOBUさんのように、小さい頃にはなかった正中の隙間が30代後半になってから現れた場合、上唇小帯付着部異常というのは通常は考えられません。健診した歯科医は、NOBUさんの正中離開を昔からあったと思って<子供の頃に取らなかったのですね>、つまり<小帯切除の手術をしなかったのですね>と言ったのだと思います。
隙間のある歯ならびを空隙歯列といい、正中離開を含めて空隙歯列の原因はいくつかありますが、成人の上唇小帯付着部異常による空隙歯列はあまり多くありません。また、成人の正中離開が上唇小帯付着部異常によるという疑いがあっても、今から小帯切除をすると歯間にブラック・トライアングル(三角形の隙間)ができて、新たな審美的問題を招来する場合がありますので、手術には注意が必要です。 NOBUさんの歯列に空隙ができた原因は(精査してみないと)分かりませんが、空隙のでき方や年齢から、歯周病のために歯ぐきが緩んで歯が動いた可能性があります。できてしまった空隙は矯正治療で治すのが基本ですが、まずは原因をしっかり突き止める必要があります。NOBUさんは、まず矯正歯科に相談に行かれるより歯周病科の専門医に相談される方がよろしいかと思います。もし歯周病が進行しているのだとすると、歯ならびどころか歯の喪失の危険があるからです。矯正治療には、健康な歯と歯ぐき(歯周組織)が基本的な条件です。
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