| あらかじめお断りしておきますが、回答はお母様にはきつい内容かと思います。
まず、骨格性の不正咬合（顎変形症）については、昔から様々なトライがなされてきた歴史があり、下顎前突症に対するその代表的な装置がチンキャップ（chin cap：頤帽装置）だろうと思います。一部の先生や大学ではいまだに使われているようですが、当院では使わなくなって20年近くになります。使わない理由は、本当に効いて欲しいケースに効かないからですが、上顎前方牽引装置や機能的装置といわれるものも結局は同じです。
経験的に、将来外科矯正に移行する可能性があると診断したものを、歯牙移動だけの矯正で終わらせることができたケースはかなりありますが、はじめから外科矯正の適応と診断したものを、歯牙移動だけの矯正で終わらせることができたケースはまず皆無です。色々やってみたが結局は最後に外科手術になった経験から、外科矯正の適応と診断したケースは、お嬢様の担当医と同様、基本的に成長発育が終わるまで何もしません。
＜本人が大変口元を気にしだし精神的なダメージを心配＞というお母様の気持ちは十分よく分かりますが、そこにつけ込むように＜早期治療で顎変形症になるのを防げる＞かのように謳うHPをみたりすると、その危うさにひやひやします。
経験からの一例を述べると、初診時6才で顎変形症（下顎前突症）と診断し外科矯正の適応とした女子のケースですが、お母様の希望もあって上顎の拡大、前方牽引からフルブラケットとワイヤによる矯正まで、色々手を尽くして15才ぐらいまで続けました。一時期、前歯の咬み合わせはプラス（＊）になりますが、顎の尖った顔つきは変化せずやがて思春期性の成長とともに咬み合わせはマイナス（＊）になり、18才から術前矯正に入り20歳で外科手術をしました。ご父兄と本人納得の上の治療だったとはいえ、外科矯正前の長い矯正期間は無駄だった、という思いが強く残っています。
＊プラス、マイナスについては下記サイト＜e-矯正歯科PLUS＞の「歯科知識」から、４）前歯の状態、をお読みください。
http://plus.e-kyousei.tv/html/shiru.htm
＜なるべく早く治療を開始する方法はないものでしょうか＞ということですが、費用や期間、そしてその間の苦労や負担が無意味になる恐れを十分承知され、それでもお子様のために今できることは何でもしてあげたい、ということであれば、手を貸す歯科医はいると思います。
以上、回答はお嬢様の矯正資料を見ないまま、顎変形症で外科矯正しか方法がないという前提でお答えしています。なお、別の矯正歯科医によるセカンドオピニオンを聞いておくのは、後悔しないためにも必要かと思います。
最後に蛇足になりますが、現在、顎変形症の矯正とその手術は、特定の指定を受けた医療機関であれば健康保険が適用できますが、昨年4月の医療法と薬事法の改正により、自費で術前矯正を行なったものの外科手術は、混合診療（禁止事項）とされて保険が適用されなくなりました。自費（健康保険不適用）ですとかなりの額になりますので、術前矯正に入るときにはよく確認してください。
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/ハミ (07/03/26(Mon) 21:57) #2807