| ガミースマイルについてお話する前に、一般論として歯牙移動の生物学的メカニズムについてお話いたします。理解しやすくするために下記の図を参考にしてください。 http://www.hiruma.or.jp/html/documentary/06.htm 歯は歯槽骨という骨の中の歯槽という穴の中にあり、歯と歯槽骨との隙間を、歯根膜という組織が満たして歯を歯槽骨に繋ぎ止めています。その歯に、水平方向、垂直(上下)方向、回転、傾斜などの力(矯正力)を加えると、それがどのような移動方向であっても、基本的に、動いていく側の歯根膜は歯に圧迫され(圧迫側)、離れていく側の歯根膜は歯に引っ張られる(牽引側)という二つの現象ができます。 時間の経過ともに、圧迫側の歯槽骨には破骨細胞という食細胞、牽引側には骨芽細胞という造骨細胞が出現し、文字通り、動こうとする側(圧迫側)の骨は吸収され隙間ができ、引っ張られる側(牽引側)の表面には新しい骨ができて、広がった隙間を本来の幅に修復しようとします。つまり、歯牙移動とは、歯槽という歯を収容している骨の穴そのものが移動することで、その結果、歯もその位置を変える(移動する)ことになります。 さて、本題のガミースマイルですが、歯の移動形式では圧下といいます。わかりやすく逆の挺出(骨から出る方向への移動)の場合で考えてみますと、歯槽骨内から出ようとする力(矯正力)によって、歯根膜腔はすべてのところで牽引側となるため、歯が伸びても歯槽骨がそれに付いて造骨されてくるので、結果的に歯は歯槽(骨の穴)から抜け出すことなく骨ごとその垂直的高さを増します。もっとも、挺出力が強過ぎれば歯根膜は断裂し歯は脱臼、さらにもっと急激に強い力が加われば歯は、脱落(抜歯)してしまいます。 <切ったりしないのに歯茎が短くなるのが、いまいち理解できない>という圧下の移動形式は、挺出とまったく逆の作用で、すべてが圧迫側となるため骨ごとその垂直的高さを減じる、というわけです。 どのような歯牙移動の場合でも、最適な矯正力を用いれば歯牙歯周組織に損傷を与えることなく、目的の位置に骨ごと移動することができる、という理屈です。ちなみに歯肉は、移動にともなって改造が行われ、新しい位置に適した歯肉に変わりますので、弛んだり波打ったりするわけではありません。これは、歯を抜歯して矯正治療した人の治療後の状態を見ていただけば分かります。
理論上は以上のとおりですが、実際はガミーさんが聞いたというように改善は容易ではありません。インプラントを固定原(抵抗源)とする方法(インプラント矯正)ならば、いくらか治しやすいかもしれませんが、何mmと言い切るのはどの矯正医にも無理です。ガミーは、場合によれば外科手術でないと無理なケースもありますので、どうしても治したいのなら、信頼のおける矯正専門医のところでまずキチンと検査をしてもらったうえで、話を聞いてください。
|