| 上顎骨は解剖学的に頭蓋骨と結合しており(くっついており)、その上顎骨を移動するには、外科的な手段(手術)で切り離し移動させて再結合させるか、長い期間、固定式の強い矯正力を発揮する装置(orthopedic force)を用いるしか方法はないはずです。 ですから、整体というものが医学的にどの程度の実証性(evidence)を持っているものか、分かりやすくいえば<どれだけ本当の意味での治療効果があるものなのか>正直わかりませんが、<上顎の正中線の位置を五ミリほど左へ歯ごと移動>というのが真実であれば、矯正歯科医学的に画期的なことであり、奇跡的な現象ともいえます。 ネット辞書あるいはネット百科事典として有名なウィキペディア(Wikipedia)によると、「整体(せいたい)とは、症状を脊椎・骨盤・四肢等の体全体の骨格の関節の歪みの矯正と、骨格筋の調整などの手技療法で治療する民間療法の一種』とあり、『現在の整体の起源は、大正時代に日本に伝わったオステオパシーやカイロプラクティックなどの欧米伝来の手技療法に、伝統中国医学の手技療法や日本武術の一部流派に伝わる手技療法、当時の治療家たちの独自の工夫などを加えたものを集大成したもの』とあります。さらに、『これは現在民間資格であり、一部に国家資格化の動きもあるが、あん摩マッサージ指圧師と業務が重複する可能性がある為、無理に近い。また現在、民間療法において<なでる・押す・揉む・叩く>あらゆる行為は、<あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律>に違反する行為で、50万円以下の罰金刑であるので、治療行為には注意が必要である。』とあります。 似た仕事に理学療法士、作業療法士というのがありますが、これはれっきとした国家資格で、仕事をするには<医師の指導のもとに>という絶対的な付加条件がつけられており、単独で開業や業務を行なうことはできない仕組みになっています。 以上長くと整体について書きましたが、こと顎関節症に関していえば、その成因から考えても整体師のおよぶ範疇ではないと思います。顎顔面の骨格的特性から考えれば、整体師がまりさんに対して施した整体行為は、上顎にではなく下顎だっただろうと思いますが、いずれにしても今の症状に対しては、これ以上整体に頼るのではなく、速やかに矯正歯科の専門医に相談すべきです。 正中の正しい位置や今ある問題点およびその解決法は、資料をもとに歯科矯正医が適切に解説してくれます。さらなる疑問は、整体師ではなくその矯正医に直接お尋ねください。
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