| (文章の修正を誤って削除してしました。同文を再掲します。) ご質問の本題に入る前に、歯はなぜ動くのか(むずかしくいうと歯牙移動の生物学的メカニズム)についてお話ししておきます。 まずはじめに、歯の周りの解剖学的形態を簡単に説明しますと、歯は歯槽骨という骨の中の歯槽という穴の中にあり、歯と歯槽骨との隙間を歯根膜という組織が満たして歯を歯槽骨に繋ぎ止めています。この歯の組織図は、下記のサイト下段の図を参考にしてください。 http://www.hiruma.or.jp/html/documentary/06.htm その歯に、水平方向、垂直方向、回転、傾斜などの力(矯正力)を加えると、それがどのような移動方向であっても、基本的に、動いていく側の歯根膜は歯に圧迫され(圧迫側)、離れていく側の歯根膜は歯に引っ張られる(牽引側)という二つの現象ができます。 時間の経過とともに、圧迫側の歯槽骨には破骨細胞という食細胞、牽引側には骨芽細胞という造骨細胞が出現し、文字通り、動こうとする側(圧迫側)の骨は吸収され隙間ができ、引っ張られている側(牽引側)の表面には新しい骨ができて、広がった隙間を本来の幅に修復しようとします。つまり、歯牙移動とは、歯槽という歯を収容している骨の穴そのものが移動することで、その結果、歯もその位置を変える(移動する)ことになります。これが歯牙移動の生物学的メカニズムです。 この様子は、水平移動ですが下記のHPのアニメーションで見ることができますので、ご参照ください。 http://www.dent.niigata-u.ac.jp/ortho/hp/treat/Q04.html
つまり、歯の移動は細胞の働きによるもので、基本的には細胞の活性の高い若い人ほど、歯は動きやすいといえます。また、移動方向にある吸収される骨の硬さ(骨密度)にもより、端的にいえば、<歯の動きにくさは骨の吸収のされにくさ>であるということもできますが、いずれにしても、細胞は歯根膜から発生してきますので、歯根膜が健全であることが歯牙移動には重要な要件です。 その他、力の加え方などで歯根膜内の組織反応が異なり、ある一定以上の力が加わると、歯根膜組織に退行性変化(硝子様変性など)が起きて、歯は逆に動かなくなってしまいます。このように、歯が動きにくいか動きやすいかの原因は複雑で、年齢によるとばかりはいえません。また、想定以上に動きやすいケースは、本来動かしたくない歯まで動いてしまうなど、それはそれでまた、むずかしいさがあります。
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